当然、「マクロなハロー効果」によって、PCユーザーはMacがWindowsプラットフォームの現実的な代替になるかどうか考え始める。この場合、Macのハードウェア技術とソフトウェア市場を併せてMacのプラットフォームをとらえている。つまり、ユーザーにとって、ハードとOSのパッケージに価値があることと、仕事に使えるアプリケーションが存在することがそれぞれ確実である必要があるのだ。
Intelプロセッサに変わる以前、WindowsユーザーにとってMacには技術的なハードルがあった。PowerPCではWindowsのプログラムを動かすのは簡単ではなかったし、速くも動かなかった。Macの性能と技術をPCと比較するのは簡単ではなかった。今ではそれが可能だ。
今年のMacworld Expoで、わたしは古くからのMacベンダー、Bare Bones Softwareの社長兼CEO、リッチ・シーゲル氏と話した。同氏はIntelへのスイッチが招いた変化について同意した。
「WindowsとIntelの関係は不思議だ。MacがPowerPCという異質なプロセッサで稼働していたころ、(Windowsユーザーは)Macを信頼できるプラットフォームとして見ていなかった。それが、みんなと同じ(プロセッサで)動くようになった途端、Macは導入するべき対象としてはっきりと頭角を現した」とシーゲル氏。
(ところで、Macユーザーの読者は、Bare BonesのYojimbo最新版をぜひチェックしてほしい。これは同社の優秀な情報整理ツール。どこかに保存した後、迷子になりがちな、メモ書き、パスワード、ブックマーク、画像、さらにはWebページまで、各種のデータを保存できる。操作は非常に簡単で、わたしは愛用している。新バージョンは1.4で、39ドルだ。)
さて、先ほども言ったように、Appleが悪評を背負っていた時間と、iPodの台頭とIntelマシンの登場以降の本当に短い時間を考えれば、Macのインストールベースの拡大はすべて、ハロー効果の現れに違いない。
わたしが最近見たところでは、このマクロなハロー効果は広い範囲に波及しており、コアな顧客――常識的に考えて最右翼のWindows支持者と思われる層――にも及んでいる。
マクロなハロー効果の幾つかの兆候を挙げておこう。
スイッチャーは、一般に信じられているような学生や一般ユーザーだけではない。
わたしは毎週多くのスイッチャー予備軍と話しているが、それで分かったのは、その多くが職場でWindowsを使っている非常に専門的な人々だということだ。中には、かなり前にMacを使っていたが、Windows中心な会社で働くためにMacをあきらめた人もいる。
例えば、先日ある知人がわたしに匿名で語ってくれた。この人物はあるERP企業の技術販売マネジャーで、Windows PCで仕事をしている。彼は以前PowerBook 160を持っていた(買ったのは1992年か1993年初頭)。だが、彼はPCにはうんざりなのだと言う。そして、そう、彼はVistaとその長所をよく知っている。
彼は「デバイスドライバ地獄」にうんざりで、「Boot CampとParallelsとVMwareのおかげで、Macではできない基本タスクのためにWindowsもキープできる」と語った。
そう、「基本タスク」には彼の会社のソフトウェアを稼働させることも含まれる。
わたしが聞いたのは、この人物はWindowsよりもMacの方が彼の本当の「基本タスク」をこなすことができると確信していることだ。同時に彼は、必要とあれば仮想化したWindows環境で作業できるとも考えている。また、どうしても必要になれば、MacのIntelベースのハードウェアでネイティブにWindowsを走らせることもできる。
一方で、Web2.0など、別の市場セグメントの人々は、PCではなくMacを選んでも全く支障がないようだ。カンファレンス会場を撮った写真やオフィス風景を撮った写真の中に、Macを使う姿がある。Appleのロゴがすぐに見つかり、Macがずらっと並んでいる。ここでMacが受け入れられているのは、そのスタイルのおかげであるはずがない。彼らは、技術に精通したテクニカルユーザーなのだ。
1月のMacworld Expoでビジネスソフトのベンダーと話したことからも、Macが引き続き受け入れられているというわたしの見方は強まった。
Mindjetをはじめとする幾つかのベンダーが、いわゆるマインドマップ作成ソフト、つまりプロジェクト視覚化やブレインストーミングのソフトを紹介した。MindjetのMindManagerには現在、Mac OS Xのネイティブ版がある。
こういうソフトを使うのはどんな人だろうか? 企業の幹部やプロジェクトマネジャーだ。
Mindjetのシニアプロダクトマネジャー、ブルック・スタイン氏によると、Macとの互換性の要望の一部は、企業の幹部がMacを使っている広告代理店や外部のコンサルタントとより簡単にファイルをやりとりする必要から生じた。クリエイティブとデザインの市場は常にMacの拠点だ。
だが、そうした要望は、クライアント側で増加中のスイッチャーからも出ている。「成長中の最大の市場は、会社では(必要にせまられて)Windowsを使っているが、自宅用にMacを買う層にある」(スタイン氏)
コンテンツ提供者のほとんどは、誰がそのコンテンツを読んでいるかを詳しく語ろうとしない。より正確に言うと、どのプラットフォームでそのコンテンツが読まれているかの数値を示さない。
だから、デイブ・ワイナー氏による2月16日付のScripting Newsブログの最初の方で紹介されていたグラフはわたしの注意を引いた。
そのブログでワイナー氏は、JupiterResearchの元コンシューマー市場リサーチディレクター、マイケル・ガーテンバーグ氏が、どのようにして現在Microsoftのエバンジェリストになったかを語っている。
グラフはScripting Newsの読者をブラウザ別に分類している。Firefoxのユーザーが最も多く(49.76%)、Internet Explorer(IE)が2位(23.43%)。だが、Mac版しかないブラウザのSafari(21.31%)とCamino(おそらく2%)が次に続く。また、Firefox利用者の一部もMacユーザーだとわたしは思う。
わざわざFirefox分を繰り入れなくても、読者の4分の1近くはMacユーザーだ。ワイナー氏はこれらの読者について次のように説明する。
「このサイトの読者は皆熱心で、その熱心さがこのサイトの特徴ともなっている。わたしがここで技術的な質問を投げ掛けると、それがどんなに不明瞭なものでも、すぐに答えが、興味深い補足説明とともに返ってくる。このような読者こそが、ここ数年でMicrosoftが失ったユーザーなのだ」(ワイナー氏)
ワイナー氏によると、数年前の同様のグラフではIEが80%のシェアを占めていた。だが、現在わたしに見えるのはMacの読者だけだ。失礼、Macを使っている「熱心な」読者だけだ。
Appleはいつもわれわれの常識を煙に巻く。Appleがビジネス市場に向けて何か大規模なことをぶち上げるのを待っている業界ウォッチャーは多い。包括的なマーケティングの取り組みだ。登場するとしたら、その方法で来るだろう。
だが、Macworld Expoに参加していたベンダーらは、Mac OS X Leopardと、特にLeopard Serverの技術を歓迎しているようだった。
おそらくビジネス市場でのMacの復活は、新たに加わった熱心な、社内での地位の高いスイッチャーの手を借りることになるだろう。そうした復活は、競争の激しい中間市場製品の持続的な成長として現れるだろう。既にMacworld Expoで、そうした製品が幾つか登場していた。
少し歴史的背景に触れると、10年前の今ごろ、Appleは「復活」の一大キャンペーンを展開した。
(当時のAppleのマーケティング担当副社長が放った)強力で広範な新アプローチについて、MacWEEKが当時広告業界紙「Marketing Computers」の編集主任だったジェフリー・オブライエン氏に意見を聞いたところ、同氏はこのキャンペーンをひとまず評価した。同氏は、Appleのそれまでの取り組みは「弱々しく、心許なく、あいまいだった」と語った。
「Appleは重要性を失う深刻な危機にある」とオブライエン氏は当時、記者のリアンダー・カーニー氏に語った。「今のマーケティングはAppleを救う唯一のものだ」
だが、Appleを救ったのはマーケティングではなかった。もしくは、1997年の復活広告キャンペーンの「コミュニケーションに対する強力で広範なアプローチ」では断じてなかった。おそらく、Appleを救ったのはスティーブ・ジョブズ氏だ。Mac OS Xかもしれないし、新しいハードウェアかもしれない。そうしたすべてが救ったのだろう。
もちろん、iPodとIntelのハロー効果もその中に含めることができる。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR