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「訳が分からないことをやらないと勝てない」――ニフティ和田社長(2/2 ページ)

» 2007年09月18日 15時35分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 「何でホワイトボードであんなに怒られないといけないんだと思っただろうが、ホワイトボードから始まるということを伝えたかった。IMでこちょこちょと隠れて話しているやつらに、自分の声で、目を見つめて話さなきゃ、地位の向上もなければ、やりがいもない、と」

 ホワイトボードは社内のあらゆる場所に導入され、社内の対面コミュニケーションを活発にした。社長も積極的に社内を歩き回って社員に声をかけ、コミュニケーションを実践する。

ニフニフは「ちょっとやりすぎじゃないか」とも思ったが……

 ホワイトボードを導入した社長室で毎週土曜日、朝から晩まで幹部とひざ詰めで話し合って議論し、1カ月ほどで方向性を決定。その後は幹部と社員に自由にやらせているという。

 「楽しさを10倍にしろ。そこだけは譲れない」――そんな社長の声に応えて出てきたのが、今年に入って続々と登場した新サービスだ。動画投稿サービス「@nifty 動画」、プロフィールサービス「アバウトミー」、やりたいことを宣言する「@nifty したい!やりたい」、年表のように出来事を記録できる「@nifty TimeLine」、動画にコメントを付けられる「ニフニフ動画」などこれまでに20以上のサービスを出し、総ページビューは2倍強に増えた。

 ニフニフ動画はニワンゴの「ニコニコ動画」にサービス内容も名称もそっくり。「ちょっとやりすぎじゃねぇかとも思ったけど」と和田社長は笑うが、“番外編”の扱いながらも企画を通した背景には「ニフティは大人で枠を超えない、というイメージがどこかにあり、それはまずいと思った。何でもありの会社だということを伝えられるプロジェクトがあってもいい」という考えがあった。

 今のニフティは、かなり冒険した企画も通りやすくなったという。「以前は『カネは使わずじっとしてろ』と言われてひたすら負け続けており、社員は萎縮していたが、最近はみんなまじめに働くようになったと思う。まじめといっても、銀行員みたいに働くという意味ではなく、熱中して寝食を忘れて仕事をする社員が増えてきた」

サービスも連携する

 新サービスの構築はそれぞれ個別に行っているが、各サービスは「部品化」して横連携できるという。「ブログにTimeLineや動画投稿、地図サービスが入ったり、掲示板とSNSをリンクできたり――APIを社内で公開し、相互利用できるようにする」

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 狙いはWeb上での表現力の向上。ブログに感じている不満・違和感を解消したいという。「ブログは左右が空いていて真ん中だけ記事が更新され、ふんどしみたい。ホームページを作りやすくしようとできた形式だが、目次があってページ立てする、といった表現力を持っていない」

 日記として利用するならそれで十分だが、Web上の表現ツールとしては不十分だと和田社長は言う。「日記代わりのお客さんが80%いたとして、残りの20%・本気で表現している人に、客は寄ってくる。ビジネスチャンスは、見る人が多い場に生まれる」

 理想形はNIFTY-Serve時代のフォーラムだ。「ユーザーが自由な発想をいかして表現できないと、フォーラムのようなコミュニティーは成立しないのでは」。表現力が十分に高まれば、各ジャンルの“人気ブロガー”が集まり、そのブログと相性のいい他サイトを連携させるなどして新たなビジネスの可能性を模索できると展望する。

 「Web上で動画や静止画、音楽は表現できて当然の時代。それらのファイルをお預かりするサービスなど、複合化したサービスが必要になっている」――上半期までにWeb上の表現ツールを一通りそろえる計画で、その後、サービスをパーツ化して横連携させつつ、コンテンツや収益モデルも模索していく。

オープン化で「広告単価を上げる」

 ビジネスモデルの可能性は、無料の広告モデル、有料課金モデル、中小企業向けのASP提供の3つあるといい、特に広告モデルが「ネット上では強い」と見て力を入れる。

 今年公開したサービスは、ISP会員以外も利用できるオープンなものばかり。クローズドサービスは閲覧ユーザーを限定するため、オープンサービスよりも広告単価が下がる――という考えが、オープン化にかじを切った背景にある。新しい広告モデルも検討中で、ユーザーが自由に掲載広告を選べる仕組みなどを考えている。

 @niftyで提供中のコミュニティーサービス基盤を中小企業向けに運営ノウハウごとASP提供する「For Active」も始めた(関連記事参照)。「ニフティは自分たちのサービスを構築し、マネタイズをしようと頑張ってきた。それを役立てる以外に、ノウハウは何もない」

「訳の分からないこと」をやらないと勝てない

 「訳が分からないことをやらないと勝てない」と和田社長は言う。「例えばアバウトミーは他社ブログとも連携できるが、他社サービスが同じ基盤に乗った時、広告は誰が仕入れるのか――そういう分野になると、訳が分からなくなる」

 ニフティ同様、積極的に他社と連携を進めているヤフーは、自前の広告のネットワークに他社メディアを組み入れて収益を上げようとしている。だが「ヤフーと同じことを今からやっても仕方ない」。

 どのサービスが収益を上げそうか、どんなビジネスモデルが最良かは「やってみなきゃ分からない」という。「簡単に芽が出る商売は簡単にだめになる。すぐに収益にはならないだろうから、積み上げていくべき」

 新サービスの構築・育成とビジネス展開とを同時に追いかけるのは難しいと見て、まずはサービス構築と集客に力点を置く。「集客と収益の2つの課題を同時に与えて達成できるほど、熟達した組織だとも思ってない」

 来年いっぱいごろまでは投資段階だ。「ワンクールやってみて、反省してやり直すぐらいの機会がいるだろう。サービスと収益を同時に考えていたらニフニフなんか出てくるわけなくて、人が寄れば市が立つ、という信念でやってもらうしかない」

 今後もスピードを重視して経営していく方針だ。「無名の利活用分野を有名にするには、トライアンドエラーを繰り返すスピードを早めるしかない。1年先には利活用分野が“倍”になっていればいい。売り上げでもページビューでも。使った金以外はね(笑)」

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