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ネットワークサービスをワンストップで――新UCOM武林社長

» 2007年10月01日 10時30分 公開
[ITmedia]

 10月1日、IP電話/中継電話サービス事業を展開してきた株式会社メディアとUSEN子会社で光ファイバーネットワーク事業を展開してきた株式会社UCOMが合併し、新しいUCOMとして発足する。旧メディア社長で、新UCOMの社長に就任した武林聡氏に、IP電話事業者と回線事業者との合併の意味や狙いを聞いた。

ITmedia さっそくですが、回線を所有せずその上に乗るIP電話事業を主にやってきたメディアと、回線事業者であるUCOMの合併の狙いは?

武林社長 合併前からメディアはUCOMと提携して、UCOMの光回線を中心にサービスを提供していましたから、合併で一体化した後も大きな変化はありません。僕らはIPの上に乗せる「Over IP」サービスの中でも、光回線が入った後のVoice Over IP(VoIP:音声サービス)だけでないOver IPサービスをメインにやってきました。それを追求していくということは変わりません。

 ではなぜ合併したかのかといますと、これは他社さんも同じだと思いますが、回線に乗せるアプリケーションと回線そのものの提供サービスは表裏一体のサービス、一体化したサービスとして取り組んでいかないという状況の中で、(メディアのような)アプリケーション開発だけでは、今後の競争についていけないと思ったからです。

ITmedia アプリケーションの部分だけで難しいという理由は?

武林社長 武林社長:2004年にメディア社長就任。メディア-UCOMの合併発表後9月にUCOM社長就任、10月1日からは新UCOM代表取締役社長に

武林社長 他社との比較で言えば、回線を選べるという部分が問題になってくるだろうと考えています。「光回線はどこでもいいんですよ」というある程度の利点がUCOMにほぼ限定されるわけですが、回線を自由に選べることよりも、自分たちの回線であるからこそ、それに乗せられるサービスの自由度が上がるという利点のほうが大きいということです。

 IP電話だけ見れば回線はどこでもいいわけですが、今後は通信というものの中で電話サービス(音声)は必須条件とはいえ、その比重は下がってきます。なくなりはしないが、“One of Them”になるだろうという仮定の中で電話だけでない部分を捉えていく必要があります。

ITmedia 電話が“One of Them”になるとすると、これから比重が大きくなるものは?

武林社長 それはまだはっきりしません。これまでは電話サービスは窓口としては強かったんですが、今後IPに乗せるサービスの主流が何になるのかはっきりしないという状況では、例えば情報システムへのリーチも必要だと思います。IP電話と物理的な回線をセットで持っているほうが、これから出てくるであろうサービスをやっていくときに有利だと考えました。

ITmedia ワンストップサービスとしてのメリットでしょうか?

武林社長 顧客側を考えたとき、以前は電話は総務担当、IP系は情報システム担当だったものが、IP電話によって徐々にクロスオーバーしていく世界になっています。「回線はどこでもいいので○○さんにいってください」というよりは、「僕らが対応しておきます」というほうが、顧客の利便性も高まるはずです。好きなものが選べるからといって、顧客が本当に一番よい/安いものを選ぶということにはなりません。面倒な上にサービスやコスト内容は大きくは違わないですから、一本化されているほうがよいはずです。

ITmedia インフラとしての回線を持つと次の設備投資額も莫大なものになりませんか?

武林社長 そうです。ただ僕は、これまでのように「インフラ側がアプリケーション側に自由に使わせてくれる世界」が今後もずっと続くかどうかは微妙で、その自由がなくなるタイミングが来るかもしれない、これは大きなリスクになる、と考えていました。回線を持っている企業にそれを握られたままで事業を進めるのはちょっと違うのではないかと。

ITmedia 新UCOMの事業展開はどのようなことを目指されるのでしょう?

武林社長 サービスを展開においては、あるエリアにおける「集積度」という考え方を重視します。ここでいう集積度とは、そのエリアにおいて、人口や企業数の中でどのくらいシェアを持っているかという考え方です。僕らはユニバーサルサービスを提供するインフラ業ではありませんから、進出しているエリア限定でナンバーワンになることをすごく意識してやっていきます。

 サービスエリアは当面あまり広げる気はありません。広げる余力があるならば、そのエリアで深掘りしていった方がいいという考え方です。同じ20億の売上なら2カ所で10億ずつより、1カ所で20億にしていくほうを選びます。次に設備投資するときに、1億ずつ2カ所につっこむよりも2億を1カ所につっこむほうがよりいいものになるはずです。エリアの集積度が高いほうがいろいろ手が打ちやすくなっていくわけです。さしあたってはエリアごとに、ここはオフィスが多い、ここはマンションが多い、ここは戸建てが多い、というようなことを感覚的にではなく、きちんとデータを見ながら、じゃあここにはこれだけの投資をする、という判断をしていくことになるでしょう。

ITmedia 新UCOMと同じところを目指している会社はほかにあるでしょうか?

武林社長 ないですね。ユニークな立ち位置でないとこれからの競争には勝てないと感じています。

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