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オリンポスの果実をみんなで食べる

» 2007年10月15日 20時55分 公開
[小林伸也,ITmedia]

 噂されてきたプレイステーション 3(PS3)の値下げとPS2非互換の廉価版投入が発表され、関連記事が上位を占めた。だが年末商戦は任天堂が圧勝するとの予測もあり、PS3の値下げ&新型の効果は不透明だ。

 リニューアルが話題を呼んだニコニコ動画だが、今のところは良い意味でも悪い意味でも著作権問題と切り離せない関係にある。違法サイトから録音録画物をダウンロードする行為も違法とする動きについて、IT・音楽ジャーナリストの津田大介さんに語ってもらった記事も前後編2本がランクイン。長い記事だったが、読者の関心は非常に高かった。

 きょう15日に更新した「著作権保護期間の延長、経済学的には『損』」も既に多くのアクセスが集まっている。「保護期間を20年延長しても収入は1〜2%しか増えない」といった計量的な報告は、これまでの賛否両論を追ってきた読者にとっても新鮮だったようだ。

 記者個人としては、中学生のころに親しんだ「オリンポスの果実」が入手しにくくなっているという下りを読み、胸が詰まる思いだった。だが、太宰治の後を追って自殺した田中英光という人の、75年前のオリンピックと恋の記憶はいま、幸福にも青空文庫でみんなのものになっている。

 記事では「上位5%までの著作者で没後出版数全体の75.1%を占める」という報告もあった。数%の著作者(の遺族)のために、大多数の作品を共有するチャンスが20年も先延ばしにされる(その分忘れ去られる可能性も高まる)のだとすれば、やっぱり切ない議論だと思う。

 記事の最後に取り上げられた「通常は、情報の伝送路を持っている人が強いが、それは伝送路にコストがかかっていた時代の発想だ」という発言を読み、週末に毎日新聞が報じて議論が噴出したアニメーター残酷物語のことを考えた。

 英ロックバンド、レディオヘッドがネットのみで新アルバムを10日に発売し、既に120万ダウンロードがあったという。価格は「ご自由に」とユーザーに決めさせる方式で、いかにもこのバンドらしい。記者は6ポンド払って、満足。

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