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「『健全な場』が最後に勝つ」「ケータイはPC超える」「Androidはうさん臭い」ヤフー井上社長に聞く(3/4 ページ)

» 2007年11月26日 13時21分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ネット広告はまだまだ拡大する。特に、ブランディング広告メディアとしてのインターネットはまだ拡大していく。

 日本の広告市場は6兆円あると言われていて、うち4兆円はマスメディア広告、いわゆるブランディング広告だ。

 広告メディアの本質的な価値は、広告主が何人の消費者にリーチできるのかということ。ネット利用者はかなりの人数になり、まだまだ増えている。リーチで言うと、ネットはテレビに次ぐ広告メディアのはずだが、市場規模はそこまで付いてきていない。

 広告メディアが最大限の価値を出すためにどうすればいいかは、経験値で作り上げていくものだと思う。テレビや新聞は50年、100年やっている。その間に広告主、消費者、メディア、それぞれがそれなりに納得できるような「折り合い」が作られてきた。

 例えばテレビだと15秒スポットという形の広告スタイルがあるが、テレビが始まったその瞬間からあった訳ではなく、その後に開発された手法だ。30分番組の中にCMを何分間まで混ぜていいかや、新聞でも何ページまでの紙面の中に何ページまで全面広告を入れていいのか、といった折り合いを、それぞれのメディアが付けてきた。ネットはたかだか10年だから、まだまだ発展途上だ。

画像 新トップページ

―― 来年1月にリニューアルするトップページは、横に細長いバナー枠を廃し、長方形の大きな動画広告枠を設置した。

 細長い枠よりは真四角に近い枠の方がクリエイティブの自由度が増すのではないか。それによって、目に入ったときの消費者に与えるインパクトが大きくなるのでは。ブランディング広告としての価値が増していくだろう。

 とはいえ際限なく大きくしていいというわけではない。1ページの中にどれぐらいの大きさまで広告が入っても、ネット利用者はそのサービスを無料で享受するための「ペナルティ」を受け入れるだろうか、と。

 テレビや新聞、雑誌でも、記事を読んだり番組を見る途中に広告が挟まってくる。それは無料で番組を見るために必要なコストで、さっき言った「折り合い」だと思う。インターネットもその折り合いを作っていっている途中段階。それができてくれば、マーケットとしてはもっと大きなものになっていくんじゃなかろうか――というのが「前半」。

 「後半」は、ネット広告には、今までの広告市場に含まれていない種類のお金が含まれている、と特に最近、理解している。例えば検索連動広告は、どう考えてもブランディング広告費を取っていっているという感じではない。どちらかというと販促費や営業経費に分類される費用。

 電通的な言い方をすると「SP(販売促進)広告費は年間2兆円あります」となるのだけれど、販促費や営業経費を全部足すと多分そんなもんじゃなくて、その5倍・10倍という大きな市場。その部分をどういうふうにインターネットに持ってこれるかだろう。

ケータイはPCを超える

―― 携帯電話事業はどうか。Yahoo!モバイルは、携帯ポータルとしては大きいが、「モバゲータウン」「mixiモバイル」などにページビューで劣っている。今後どう拡大していくか。

 携帯サービスは中長期の部分と短期の部分で違うと認識している。PCのインターネットは最初、検索から始まった。その後、ヤフーで言えば、ニュースを入れるなどして、だんだん色んなものが増えた。今はある意味「何でもあり、何でも使われる」という状態になっている。

 5年、10年のスパンで言うと携帯も同じになると思う。携帯もPCのネットと同様にありとあらゆるものがあって、それが色んな用途に、色んな人に使われるだろう。

 ただ、PCと携帯は出だしがどうも違っている。PCのネットは技術者や研究者から始まったが、携帯は若い子から始まっている。短期的には、若い人にたくさん使ってもらえるようなサービスができるのであれば、やったほうがいい。

 今の携帯のインターネットは、仕事目的ではあまり使われておらず、どちらかというとエンタメ的な使われ方しかされていないが、中長期で言うと、今のPC用のヤフーのサービスと同じように、ありとあらゆるものが使われるようになるだろう。そのために準備していく必要がある。

―― 今後は、PC向けネットが小さくなり、携帯向けが大きくなっていくのか。

 PCは今後10年で言うと縮むと思う。PCは重いし、持って歩くのはなかなか大変。PCの前に座っている時間ってものすごく限定的。携帯は外を歩いている時や飲んでいる時も含めて使える。接触可能時間が圧倒的に長い。今後5年ぐらいはPCの方が伸びると思うが、その後は携帯が便利になってPCが縮むだろう。

Androidは「歓迎すべきだがうさんくさい」

―― 米Googleが「Android」というオープンプラットフォームを出した。

 PCと比べてモバイルが決定的に遅れているのは、プラットフォームが統一されていないという部分。だから、1つのサービスを作るのに3キャリア対応しなくてはならず、キャリアの中でも型番によって別に作るなど、何種類も同じものを作らないといけないなど、開発に手間がかかる。

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