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» 2007年11月28日 22時29分 UPDATE

私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」に反対意見集まるが…… 埋まらぬ「権利者」vs.「ユーザー」の溝 (2/3)

[岡田有花,ITmedia]

 個人からは多くの反対意見が多く寄せられた。その内容は、中間報告で権利者側が示した違法ダウンロードからの被害額資料について「実態を反映しているか怪しい。被害に関する統計データの処理も恣意的で、印象操作のためのデータとしか思えない」といった指摘や、「『情を知って』の基準があいまい」「ダウンロードに限定するとのことだが、ストリーミングとダウンロードを切り分けるのは難しく、適用範囲がストリーミングに広がる危険性もある」「ダウンロードサイトが違法かどうか、ユーザーには分からないことも多い。全ユーザーが犯罪を犯すリスクを負い、ネットの利用を萎縮させる」といったものなどだった。

「違法サイト」の定義は

画像 オブザーバーも多数

 「違法サイトと適法サイトの区別は、ユーザーからは分からない」という意見について、日本レコード協会などは「『適法マーク』を制定し、知らずに罪を犯すリスクをユーザーに負わせない」と説明してきた。これに対して個人から「動画投稿サイトや海外のサイトなどはそういったマークを付けることができず『適法市場』から不当に締め出される」といった意見が多く寄せられた。

 MIAUのパブリックコメントでは「『違法サイト』というくくり自体が誤解を招く表現で、ネットユーザーの法規範意識を反映しているとは言えない」と意見する。

 また現行法では、著作物を著作者に無許諾でアップロードする行為は「公衆送信権」(送信可能化権)の侵害とされて違法だ。ユーザー側からは「送信可能化権で取り締まれば、ダウンロードまで違法にする必要はないはず」という意見が挙がったが、レコード協会など権利者側は「海外サイトや、送信元が隠れるP2Pファイル交換ソフトなどの場合は、送信可能化権だけでは十分な対策が取れない」と反論する。

 権利者とは関係ない第三者が「おまえは違法ダウンロードをしただろう」と一般ユーザーに架空請求する可能性も、ユーザー側から指摘されていた。これについて日本映画製作者連盟は「中間整理に示されたような(『情を知って』など)条件を付けることで利用者は保護できるため、架空請求の恐れは権利保護をためらう理由にならない」と主張する。

ユーザーは「理解不足」?

 レコード協会専務理事の生野秀年委員は、ユーザーから寄せられたパブリックコメントについて「中間整理に示されていた『ネット利用の萎縮効果を招かないよう手当する』『違法サイトからのダウンロードには罰則を設けない』といった内容を、正確に理解していない意見もある」と指摘する。

 津田委員はこれに反論。「これまでの議論は、一般ユーザーというサイレントマジョリティの声が届かない場でされてきた。ユーザーは、著作権法がどう変わってきたかという文脈を見た上で反対意見を出しているのでは。その声には耳を傾けるべき」と主張する。

 「権利者の方々がネットユーザーから叩かれているという現状があるが、それはユーザーの理解が足りなかったり、ユーザーがわがままなのではなくて、『何でこんな制度なんだろう』と素朴な疑問をぶつけているだけだと思う。それを無視するのではなく、なぜ彼らが憤っているのか聞いた上で、対立点を明らかにして議論していくべき。ダウンロード違法化が、十分に議論をした上での結論なら納得できるが、このまま通ったら不平はさらに高まり、ユーザーと権利者との溝も深まるだろう」(津田委員)

 JEITAの亀井委員も「ダウンロード違法化について、中間整理では一応の結論が出たことになっていたが、反対意見が相当数出たことについても議論しないと、前提でつまづきかねない」と指摘する。

 情報セキュリティ大学院大学教授の苗村憲司委員は「テンプレートが多かったとしてもたくさんの人が意見を出したことは無視できない。今回事務局が提示した資料は、個別の項目に分かれており、『違法サイトからのダウンロードを合法とするならば補償金制度は維持・拡大し、違法とするのなら補償金制度は縮小する』――など、一連の流れが見えない」とし、パブリックコメントの整理方法の修正を、事務局に求めた。

権利者の経済的不利益、本当にあるのか

 「私的複製による経済的不利益はそもそも存在するのか」という根本的な部分について議論が尽くされていないという意見も、ユーザーやメーカー側などから多数出ている。個人からのパブリックコメントで「私的複製は利用者に与えられた権利。権利者が対価を要求することが間違っている」「タイムシフトやプレイスシフトのための複製では損失は出ないはず」「経済的不利益の面ばかり強調するが、私的複製が強力な宣伝にもなり得るのでは」――といった意見が多く寄せられた。

 これに対して実演家著作権隣接センターの椎名和夫委員は「議論が尽くされていないというなら小委員会での1年半は何だったのか」と息巻く。「私的複製が経済的不利益に直接結びつく部分もあれば、そうでない部分もある。『権利者に不利益を及ぼさない複製だけが出来る媒体』というのは存在しない。複製は混然と行われ、損害には濃淡がある。経済的不利益につながらない複製があるからといって、補償金制度を直接否定する理由にはならない」(椎名委員)

 主婦連合会の河村真紀子委員は真っ向から反論する。「私的複製ができなければ、CDをもう1枚買っていた、というのであればそれは損害だろうが、2枚目を買わないなら損害にはならないはず。『実害がないケースもある』と認めながら、その次には『損害には濃淡がある』とし、『現在の複製は、受忍限度を超えている』などを主張するのは論理の飛躍。消費者として納得できない」

 JEITAの亀井正博委員は「例えばiPodがなかったとして、どれだけの人が改めてCDを購入するか、という議論がない限り補償金制度は制度論として意味がなく、事実の説得もできないのでは」と指摘する。

 一橋大学教授の土肥一史委員も「CDを複製する100人がいたとして、私的複製できなかった場合は全員が2枚目を買う――という前提なのかどうか」などと疑問を呈したが、議長を務める東京大学教授の中山信弘主査が「1992年の制度導入の際に議論されていた内容だ。そもそも論を始めると収集が付かなくなる。それをどう変えていくべきか議論してほしい」ととりなした。

 「コピーできる便益を、権利者に還元せよ」――レコード協会専務理事の生野秀年委員は主張する。「2枚売れるCDが1枚しか売れなかったというのは明らかな損害だが、CDのセールスに変化がなかったなら、それでいいのか。消費者はコピーすることによって便益を被っている。享受した便益を権利者に還元する――という考え方があっていいのでは」

利用者には寛容になってもらえないか

 日本音楽作家団体協議会の小六禮次郎委員は、文化論から切り込む。「利用者にはもう少し寛容になってもらえないか。記録媒体を複数持ってる利用者でも、課金される額は年間100〜300円程度だろう。その程度の金額で自由な複製が認められるなら、それほど大きな『利用者にとっての不利益』なのだろうか。わずかな補償金が日本文化を支える柱になる、例えば税金のようなもの――と考えてもらえないだろうか」

 河村委員は反論する。「税金と言うのなら、税で徴収すべきだ。10円であろうと、消費者にとって何の得にもならないような金額であろうと、消費者団体としては不当なものには反対する。一部の職業のために不公平感を許容せよ、と言いながら、数十億円が特定の団体に入るのは不公平だ」

 日本記録メディア工業会著作権委員会の井田倫明委員は「補償金の問題は不利益をどう補償するかという問題であり、文化の振興論とは異なる。制度論に入る前に詰めることがたくさんあるのでは」と議論不足を指摘すると、椎名委員は「ではどういった説得を行えば、議論してもらえるのか」といらだつ。「複製が手軽になり、権利者サイドから見ると経済的不利益が拡大しているように見える。そうでないと言うなら、われわれを説得してほしい」

音楽や映画に興味がない人まで支払わされる補償金

 「音楽や映画に興味のない人も多いのに、そういう人まで支払わされているのが補償金だ」と津田委員は指摘する。「2006年のレジャー白書によると、余暇に映画を楽しむ人は3870万人、音楽は3690万人。残りの3分の2は映画にも音楽にも興味がない」

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