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10年前、パレスチナで――署名サイト「署名TV」を始めた理由(2/2 ページ)

» 2008年12月22日 17時34分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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もしお金にまったく困らないなら何をするか

画像 イーココロ!

 新会社では当初、Eメールを使ったマーケティングやアフィリエイトプログラムの運営などを手掛けた。だが「どれもしっくりこない」と感じていたという。

 そんな時、米国によるアフガニスタン侵攻のニュースを見た。「世界に憎しみが広がっている」と感じ、いてもたってもいられなくなった。「もし自分がお金にまったく困らない状況だったら、何をするだろうか。今すぐアフガニスタンに行って、活動するんじゃないだろうか」と考えた。

 だが支援活動のノウハウがない。それならば「世界中で活躍するNGOやNPOに送金できるようなものを作ろう」と決心し、ひらめいたのが「イーココロ!」だった。

1年間で集まった募金は目標の250分の1

画像 イーココロ!

 2003年にスタートしたイーココロ!は、ユーザーが広告を1クリックするたびに1円を募金できるサービスだ。広告を出す企業はクリックされるたびに2円を支払うが、そのうち1円は募金に回す。残りの1円が手数料としてダ・ビンチの収入になる仕組みだ。

 イーココロ!で紹介するサービスにユーザーが会員登録したり、資料請求すると、企業が自分に代わって募金する「アクション募金」、楽天市場などでためたポイントを使って募金できる「ショッピング募金」といったメニューもある。

 誰でも気軽に募金できるのが売りだが、開設から半年間で集まった募金は2万円、2年目も40万円しかなかった。「初年度は500万円くらい集まると考えていた」が、見込みを大きく下回った。「信念を持ってやっているので、絶対に続けていこう、しぶとくやろうと思っていた」

 募金を集める団体が動画を使って活動を紹介できるようにしたり、ブログパーツを配信したりと、地道な機能改善を続けた。クリック募金のシステムをASPで他社に提供するサービスも始めた。

 すると、募金額と売り上げは徐々に増え始めた。募金は昨年1000万円に、今年は2200万円ほどになる見込みだ。収支は赤字続きだったが、今年ようやく損益とんとんになりそうだという。

 イーココロ!が軌道に乗り始めた昨年、社名をユナイテッドピープルに変えた。

「ネットなら多くの声を集められる」――署名TV

 今年3月には、イーココロ!の姉妹サイト「署名TV」をオープンした。気軽に署名活動が始められるサービスだ。

 署名を呼びかけるにはまず、名前や住所などを入力して会員登録する。その後審査に通ると、集めたい署名のテーマや説明文を投稿できる仕組みだ。署名するだけなら、会員登録も不要で、賛同する呼びかけを見つけたら「今すぐ署名する」をクリックし、名前やコメントなどを書いて送信する。

 署名TVのアイデアを思いついたのは、開設する1年ほど前。関根社長はその頃、イスラエルがレバノン侵攻でクラスター爆弾を使ったことをニュースで知り、憤りを感じていたという。日本の外務省に対し「イスラエルを非難してほしい」とメールも送ったが、返信はなかった。「1人の声でダメなら、多くの声を集めればいい。ネットなら集められそうだ」と考え、署名TVを構想した。

 「たった1人の力は限られているが、結集したらすごい力になる。数が多ければ、見過ごせないものになっていく。署名TVは、イーココロ!のように寄付金は生み出さないが、社会の間違いを正す原動力にはなる」と考えている。

画像 署名TV

 「タバコ増税に反対」「カナダのアザラシの赤ちゃんを助けましょう!」――サイトではさまざまなテーマで署名が呼びかけられている。「2次元キャラとの結婚を法的に認めて下さい」というユニークな署名活動もある(「2次元キャラとの結婚、法的に認めて」――署名募集中

 9月までは月間PVが15万ほどしかなかったが、10月にこんにゃく入りゼリーの販売再開を求める署名活動が始まってから、PVが10倍以上に増えた。なぜこんにゃく入りゼリーの署名活動をきっかけに、アクセスが増えたのか――「一般に消費される商品で、ユーザーに近い問題だったから注目を集めたのでは」と分析する。

 署名TVのビジネスモデルは「ない」という。「メインはイーココロ!なので、イーココロ!の宣伝になればそれでいい。社会に必要なサービスであれば、それが存在意義になる」と考えていた。AdSense広告を掲載しているが、収入はゼロに近かった。

 だがアクセス増によって、サーバ代がかさんでおり、「署名TVを自立させることは急務」という。収益化に向け、集めた署名を印刷する代行サービスなど有料機能の搭載や、署名TVのシステムを他社にASP提供するといったビジネスを検討している。

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