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同人誌作りは甘くない 「焼き肉焼き鳥恋物語」ができるまで(2/3 ページ)

» 2008年12月29日 16時28分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 コミスタに下書きを描いていく

 だが画面を見ながら手元のペンタブレットで線を引くという作業が難しく、へろへろした線になってしまう。そしてやっぱり、コミスタの操作法はよく分からない。

 「ページを増やすにはどうすればいいんだ」「気付いたら下書きペンの色が変わっていて元に戻せない」「間違って描画レイヤーに下書きしてしまったけど、それを下書きレイヤーと統合するにはどうすれば」「背景画像素材ってどうやって使うんだ」

 新しいことを試そうとするたびに分からないことにぶつかる。マニュアル本と首っ引きになり、四苦八苦しながらなんとか下絵までは終わらせたのだが、ここでまた難関がやってきた。「保存したはずのページのフォルダ名が、勝手に変わっているっぽい……」

画像 アニメイトで漫画原稿用紙を買ってきました

 コミスタは、作品を保存すると独自の形式で保存され、ページごとに「page0001」などフォルダができる。記者は6ページ描いたので「page0001」〜「page0006」までのフォルダができているはず。だがある時開くとpageフォルダが「_tmp0001」という見慣れないフォルダに変わっていたのだ。

 「なんだこりゃ」。ググったところ同じ症状で悩んでいる人の掲示板の書き込みを発見。描いたファイルも消えたわけではなく、そのまま開けることが分かったが、問題の根本的な解決策はよく分からない。

 このままコミスタを使い続けていたら、また別の難関にぶち当たって締め切りに間に合わなくなりそうだ。恐ろしくなってきた。

 「もはや、ここまで」。記者はコミスタをあきらめ、そのままアニメイトに走って漫画原稿用紙を買ってきた。もう紙に頼るしかない。IT戦士たる記者だが、ITを使った漫画制作に挫折した。

 コミスタは慣れれば便利な漫画制作ツールで、コミスタを使っている同人作家やプロ作家も多いと聞く。漫画に必要な素材や機能はすべて入っており、使い方がさえマスターすれば、紙で描くよりもずっと効率良く描けるはずだ。だが漫画制作が初めてかつ習熟する時間もない状態で、多機能なコミスタを使いこなすにはハードルが高すぎた。


ノートPCをライトボックス代わりに 超アナログ作業スタート

画像 プリントアウトした紙の上に原稿用紙を載せ、ノートPCの光で透かして原稿を作った(※良い子はマネしちゃいけません)

 コミスタで描いたものを捨ててしまうのはもったいないし、1から描き直す時間もない。そう考えた記者は、コミスタで描いた下書きを一度紙に印刷。漫画原稿用紙をその上に置き、透かしてなぞって紙原稿を作っていった。デジタルで描いた絵を印刷して紙とシャープペンシルでなぞるという行為に、何とも言えないやりきれなさを感じながら。

 漫画原稿用紙は分厚いしっかりした紙であまり透けないので、ノートPCのディスプレイをライトボックス代わりにするという荒技を敢行。ディスプレイの上に下書きと原稿用紙を重ねて載せ、ディスプレイの光で透かしてなぞっていった。ディスプレイを傷める可能性があるが、とにかく時間がない。背に腹は代えられなかった。

「原稿用紙」ってどうやって作るんだ

 コミスタとの格闘に敗北し、デジタル作業にすっかり自信を失っていた記者は、このまま紙で入稿しようとすら考えていた。だがほかの仲間と紙原稿をやりとりしている暇はないし、デジタルで原稿を描いている人もいる。やはりデータ入稿は避けられそうにない。でも、どうやって。

 印刷所の「データ原稿の手引き」を読んでみたが何を言っているのかよく分からない。例えば原稿のサイズ。「15.4×21.6センチ(3ミリ大きめ)または15.8×22センチ(5ミリ大きめ)に統一すると便利」と書いてあるが、3ミリ大きめって何と比べて?? Photoshop上で3ミリってどうやって測るの?? 統一すると便利だけどしなくてもいいの?? またまた大混乱する。

 「もう限界だ」――記者は助っ人に頼ることにした。同人誌制作に詳しい職場の先輩にすがったところ、親切にも「印刷所の指定にぴったりの原稿用紙ファイル」を送ってくれることになった。助かった……。

 あとは、手書き原稿をちょうどいい大きさにスキャンしてこのファイルに張り付け、グレーで彩色すればOK! と思ったのもつかの間、次の難関が襲い来る。

グレースケールってどうやるの?

 線画まで作った手描き原稿を白黒2値でスキャンし、もらった原稿用紙上に張り付けた。デジタルで描いた原稿を印刷して紙になぞり、それをまたスキャンしてデジタル化するという不毛感あふれる作業にうんざりしながら、次の工程――「グレースケール着彩」に移る。

 グレースケールとは、白と黒の濃淡だけで表現された画像だ。真っ白、真っ黒の「2値」に加え、さまざまな階調のグレーを使い、洋服や髪の毛、背景などのさまざまな色を、グレーの濃淡で表現していくのだ。

 記者は、白黒の漫画原稿はグレースケールで着彩するものが増えているというのは知識としては知っていたのだが、実際にどうやって塗ればいいのかがまったく分からない。「さまざまな階調のグレー」をPhotoshopでどう出すのかが分からないのだ。

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