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日本のアニメが世界に「売れない」 生き残りの道は(2/2 ページ)

» 2009年01月28日 18時12分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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国内アニメ産業、06年をピークに縮小

 国内でも、アニメが置かれた状況は厳しい。日本動画協会の発表によると、国内アニメ産業の総売上高(海外販売も含む)は06年がピークで、07年には前年を割った。

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 「アニメ業界にはマイナス要素の方あまりにも多すぎる」と岩田さんは指摘する。マイナス要素とは、(1)地上波テレビが不況に入った(日本民間放送連盟加盟127社のうち、約4割の55社が08年9月期経常赤字に)、(2)アニメは視聴率が取れないため「キー局でゴールデンタイムに放送するのは不可能」、(3)アニメ単体でヒットする作品がない――など。アニメの制作本数も激減している。

 プラス要素として唯一挙げたのは、アニメを流すメディアが多様化していることだ。BSやCS、地上波デジタルなどで多チャンネル化が進んでいるほか、ネット配信や携帯電話向け配信も盛ん。「ニンテンドーDS」や「Wii」「プレイステーション 3」などゲーム機向けにもネット配信できる環境が整っている。

(※)初出時「07年をピークに減少」としておりましたが「06年をピークに減少」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。

ネット時代の新ビジネスの開拓へ 「Crunchyroll」で海外配信

 「危機はチャンス」――テレビ東京は今後もアニメを積極展開する方針で、ネットを活用した新たなビジネスにチャレンジしている。

 1月から、米国のアニメ専門動画共有サイト「Crunchyroll」で、「NARUTO」「銀魂」など「テレビ東京の最強コンテンツ」を、日本での放送の1時間後に有料配信。月額7ドルで、会員数は1万人を超えたという。日本のアニメチャンネル「AT-X」(月額1575円、4月から1890円に値上げ)の会員数は「10年かけて10万人になった」というから、1カ月弱で1万人を達成した意味は大きい。

 Crunchyrollを含めた3サイトで、放送の7日後に広告付き低画質版の無料配信も行っており、NARUTOの無料配信には1話平均16万アクセスあったという。

 海外向けネット配信の狙いは、課金や広告からの収入だけではない。日本での放送直後に字幕付きで配信することで、「日本で放送されたアニメに1番に字幕(ファンサブ)を付けてネット配信することに命を賭けている人たち」のやる気をそぎ、違法配信の抑制することも大きな目的だ。

 Crunchyrollには従来、権利者に無許諾のアニメも多く掲載され、問題になっていた。だが運営元の米Crunchyrollは「株主から、そろそろまっとうな企業に脱却するよう言われていた」時期。テレビ東京が合法的に人気コンテンツを提供することで、Crunchyrollが“まっとうなサイト”になる支援をしつつ、「違法行為で成長した企業がほかの違法企業を取り締まる効果も期待している」という。

 NARUTOなどは万単位のアクセスを集める人気作品だが、コンテンツによっては300アクセスしか集まらないものもあるという。「『1本10万円で売れました』の世界とは違い、コンテンツの力で利益が上がる」と手応えも感じている。

 日本では、地上波テレビのビジネスモデルがまだある程度健在とみており、国内でのアニメのネット配信には慎重だ。それでも「需給バランスは崩れ、枠が余っている。タカビーで敷居が高いテレビではやっていけない」。状況を悲観するのではなくチャンスととらえ、ほかの媒体と連携しながら新しいビジネスモデルを築いていく考えだ。

 講演は、デジタルハリウッド大学が1月28日に開いた「アニメ・ビジネス・フォーラム+2009」で行われた。

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