iPhoneアプリで演奏した場合は、演奏シーンの動画も撮る。三脚にコンパクトデジタルカメラ「EXILIM EX-V7」を載せ、演奏している姿を自分撮りする。動画ができればiMovieで歌のファイルと組み合わせ、歌詞をキャプションとして付けて完成。動画は2時間もあれば作り終えるという。
投稿先は主にニコ動だが、YouTubeやzoomeに投稿することもある。洋楽のカバー曲などは、海外ユーザーが多く集まるYouTubeの方が受けがいいこともある。
「再生数は初期に伸びないと見に来てもらえなくなる」から、動画を投稿したらTwitterやmixiで告知し、まずは知り合いに見てもらう。ニコ動の投稿ページは開きっぱなし。少し緊張しながらコメントを待つ。
ほめてもらったり「負けた」と書かれると気持ちいい。音楽関係の友人から受ける手厳しい評価や、見知らぬ人からの「これはひどい」コメントに打ちひしがれることもある。
これまでに投稿したのは30曲弱。投稿作品はマイページで一覧でき、コメントが付けば上に上がってくる。マイページは1日何度も見に行っては「ほくそ笑んでいる」。1000回も再生されればうれしいという。
オリジナル曲も作るが、好きな洋楽を初音ミクにカバーさせ、投稿することの方が多い。「自分の好きな音楽を作りたい、好きなものを紹介して広く伝えたい」から。
これまで一番手応えを感じたのは英語版「大きな古時計」の“続編”で、ニコ動で5000回以上再生された。「日本で誰もカバーしていない曲を紹介できた」ことに満足している。その後作った曲は「まだそれを超えられていないと思う」。
ただ洋楽曲のカバーは、著作権の問題で投稿できないことが多い。ニコ動やYouTubeなど国内大手動画サイトはJASRAC(日本音楽著作権協会)と包括契約を結んでいるが、JASRACは洋楽の動画の権利は管理しておらず、洋楽カバーを権利者に無許諾で投稿すると著作権を侵害することになるためだ。
権利侵害を避けるため松尾さんは、著作権保護期間が切れた洋楽や、フリーで公開されている洋楽などを「発掘」してきて初音ミクに歌わせ、公開しているという。
オリジナルは、“ネタ度”の高いものが多い。自分の言葉で自分の思いをさらけ出す真剣なオリジナルは「勇気が必要」と感じているからだ。「オリジナルを出している人はすごいなと思う。プライバシーを切り売りしている感じがして」
ネタなしのオリジナルは、普段とは別の名前で出したり、歌詞を英語にしたりして、さらけ出す恥ずかしさを軽減しているという。
ニコ動で誰かが「松尾P」という名を付けてくれ、「ニコニコ大百科」にも項目が作られていた。「たぶん知り合いが書いてくれたと思う。うれしかった」
「反響を得たい」――曲を作る動機はこれに尽きる。趣味で曲を作っても、ライブで演奏できる機会はめったにないから、「演奏や歌をほめてもらいたいという欲求がある」。
最終目標は「iTunes Storeでのワールドワイド販売」と笑うが、mixiでつながっている友人や、Twitterでフォローしてくれている人に受け入れてもらえればいいと思っている。「そうしないと、自分が喜べないから」
2次創作してもらえるような作品も作ってみたい。そんなことも思いながら、暇を見つけてはリビングのMacに向かっている。
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