ITmedia NEWS > ベンチャー人 >

「Amazonクラウド」の威力ネットベンチャーでもできるクラウド(2/3 ページ)

» 2009年08月11日 08時15分 公開
[今泉大輔,ITmedia]

Amazon EC2を活用するための壁

 ピーポーズでは、システムの企画当時からインドのプーネ市に拠点があるソフト会社F社に開発を委託しており、いわゆるオフショア開発を行っている。すべての開発は彼らが担当し、当然サーバの運用も手掛けている。早速F社に「Amazon EC2への移行は可能か」「費用はいくらか」「移行に当たって解決すべき課題はあるか」を調べてもらった。

 結果は「移行は可能」「費用は1インスタンス(仮想サーバ単位)当たり月間75ドル」「Webサービスの運営には2〜3インスタンスが必要」ということだった。上述のように初期費用が要らないのだから、コストメリットはすぐに出ると考え、すぐに移行の準備に取りかかった。

 ここでAmazon EC2の利用における英語の壁について説明しておきたい。業務で活用するサーバを日本のホスティング会社からAmazon EC2に移すには、専用の技術文書を読みこなす必要がある。わたしも当初はその量に恐れをなして、最初はインドの連中に任せてしまった。だが読み進めてみたところ、それほど難解ではないことが分かった。

 実際、Fedora Core 8上でPHP 5.2、Apache 2.2、MySQL 5が動くインスタンス1つを、10分程度で立ち上げることができた。Apacheが動いているWebサーバのトップページもWebブラウザから確認できた。

 サーバ関連の英語の技術文書を日頃から読み、必要な情報を収集している方ならば、Amazon EC2の英語の壁はまったく気にしなくていいだろう。そうでない場合は、日本でAmazon EC2の導入を支援している企業に相談をする必要がある。

*学びing、ハートレイルズなどが関連サービスを提供している

Amazon EC2移行ですべきこと

 Amazon EC2移行時には、以下の設定や作業をインド側に委託した。

  • アクセスキーとX.509証明書の生成
  • Firefoxのプラグイン「Elasticfox」の設定(EC2の操作が簡単になる)
  • セキュリティグループの設定
  • 恒久的なストレージ容量の設定
  • インスタンスの起動と設定
  • 恒久ストレージボリュームの割当
  • pepoz関連のデータの移行
  • pepoz関連のアプリケーションのインストール
  • セキュリティ環境の設定
  • Elastic IP Addressの割当
  • 最終設定

 これらの手順の多くは、Amazon EC2関連のマニュアルで細かく説明されている。説明がない部分は、Amazon EC2以外の環境でサーバを移行するのと同じ作業である。

 インド側の見積もりによると、これらに要した労力は5人日程度。本サーバ移行の当日は種々の調整やテストなども実施したので、プラス3人日程度を要した。それ以外では、ピーポーズ側でIPアドレスの変更に伴うネームサーバの設定を変更した。

メールサーバの割り当てに注意

 インドからの情報で、メールサーバだけはAmazon EC2に置かない方がいいことが分かった。Amazon EC2がWebサーバなどの個々のインスタンスに割り当てるIPアドレスは、一種の動的なアドレスであり、メールサーバにそれを使うと、われわれのドメインのメールがスパムリストに入る恐れがあるからとのことだった。この点については異論もあるだろうし、技術的に対処できるかもしれないが、ピーポーズでは、Amazon EC2を使わずに別途メールサーバ環境を探した。

 最終的に選んだのはGmailの法人用サービスである。こちらはサーバを借りるという価格体系ではなく、1アカウントにつき年間50ドルという料金設定だ。安いようで高い、高いようで安いという微妙なラインであるが、ここが一番いいという結論に達した。以前は多数のメールアドレスを使っていたが、これを機に最低限にまで減らしたことはいうまでもない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.