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「ペットじゃない、ゲームじゃない」から愛される So-net「リヴリーアイランド」「1を10にする」ネットサービスの育て方(2/2 ページ)

» 2009年08月18日 13時02分 公開
[古川健介(ロケットスタート),ITmedia]
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画像 フォームのテキストを書き込むとリヴリーの吹き出しに表示。ほかのユーザーとチャットができる

 通常のチャットは自分自身が発言している、という形になります。アバターを使ったチャットは、自分の分身がチャットしている感じになります。

 一方で、リヴリーアイランドの世界観では、飼い主が思っていることをキャラクターが代弁している、という形になります。

 自分の思ったことをペットであるリヴリーキャラクターが発言するために、操作する側にとっては、通常のペットを操作しているのとは違った感覚が出てきます。

 「リヴリーアイランドのキャラのことを、僕らは『コミュニケーションクリーチャ』と呼んでいます。僕の解釈では、リヴリーはキャラクター的な要素があるボイスレコーダーのようなイメージ。ここでのボイスレコーダーとは、コミュニケーションツールという意味です」(土屋さん)

 一般的にペットというと、自我があるものとしてとらえます。同じくSo-netが提供している「PostPet」はペット自体に自我があります。しかし、リヴリーには自我が「明確」にはありません。「自我がない」というよりは「押し殺している」と言った方が正しい。自分から言葉は発しないけどご主人の言いたいことを理解した上で増幅してくれるツールなのです。

 「掃除をしてくれるロボットには愛着はわかないですよね。リヴリーは、機能的なツールですが、そのツールに愛を注入しているようなイメージです。一方で、アバターというのは自分自身の分身なわけで、そこに愛情は注げません。コミュニケーションツールに対して愛情が持てるというのが特徴です」(菊池さん)

 リヴリーはあくまで、自分自身ではなくペット、コミュニケーションクリーチャーであり、自分の言葉を伝える増幅器的な役割を持っています。その点では、「ペットというより、アイテムというほうが近い」(土屋さん)といえるでしょう。

ペットじゃないからこそ「愛着」がわく

 土屋さんは非常に興味深い言い方をしていました。それは「ペットに対しては愛情がわくが、愛着という観点ではアイテムのほうがわく」ということです。

 ペットは自我を持って動きますが、リヴリーは自分が操作しないと全く動かない。非常にアイテム的といえます。しかし、リヴリーにえさをあげたりトイレを世話してあげたりなど、ペットとしての世話が必要です。

 「リヴリーはアイテムだけど、“生きている”アイテム。機械だけど、生きている。昔のテレビで写りが悪い時って『テレビの機嫌が悪い』といった表現をしていましたよね。あれってやっぱり機械が生きていたという感覚だったと思うのです」(土屋さん)

 リヴリーはペットとしての「愛情」と、アイテムとしての「愛着」の両方の対象を兼ねているのです。そこにユーザーがハマるポイントがあるかもしれません。

“機械のペット”を超えた愛着

画像 自殺リヴリー

 このインタビューの前に発見したものがあります。それは自殺リヴリーというサイトです。

 登録したまま放置されたリヴリーが、モンスターなどに殺されていくのを止めよう、というサイトです。

 単なる機械のペットだと分かってても、こういうサイトを立ち上げざるを得ないほど感情移入ができるサービスは多くありません。

 開発者の思いは、きちんと届いているようです。

ファンイベントには4000人来場

 100万近い登録ユーザーがいるサービスですが、これまで、、大規模なプロモーションはほとんどしてこなかったそうです。

 「基本的には表に出ることをやっていないんですよ。プロモーションもしない。積極的にニュースリリースを出したりもしていない。というのも、キャラクターコンテンツで、一番大切なのは、キャラクターを愛してくれるユーザーがどれだけいるか、なんです。リヴリーアイランドでは、リヴリーを愛してくれるユーザーを求めていました。中での、ニッチなキャラクターが好きな人、というのにリーチさせるのが大切だと考えています」(土屋さん)

 「キャラ好きにリーチするにはクチコミが一番いい」(菊池さん)

 実際、リヴリーのファンは多いようです。昨年7月に表参道で行ったイベントには、2日で4000人のファンが来場。その2週間前がちょうど「iPhone 3G」の発売日で、各マスコミが行列を伝えていましたが、それを超えるほどの行列ができていたとか。

 100万人近くの登録ユーザーがいるのに、僕の周りのIT系の人の中の知名度はあまり高くありません。その点について聞くと「デザイナーとか女性の方は案外知っていたりしますよ。デザイン系の人や女性編集者などの間では知名度は高いです。知っている層はかなり限られている気はしますね」(菊池さん)

 母親と娘が一緒にやるというパターンも多いんだとか。いかに一般の女性に浸透しているかが分かります。

リアルイベントや海外展開も

 今後のリヴリーアイランドはどういう発展を考えているのでしょうか。

 「今のリヴリーアイランドは、どうしても知る人ぞ知る、という状況です。今年はいろいろと種を仕込んでいて、いろいろと発表できると思います。また、海外での展開も考えており、今年はリヴリーアイランドをもっと広める施策を打っていく予定です」(同社エンタテイメント事業部の河合浩之課長)

 この夏も東京・渋谷でリアルイベントを行い、リヴリーアイランドを紹介したり、ユーザーから募集したイラストやぬいぐるみなど作品を展示する予定で、昨年の倍以上・1万人の来場者を見込んでいるそうです。

イベント「Dr.ミュラー研究所 研究発表会 2009 〜GoGo Livly〜」

日時:8月22日(土)〜8月30日(日) 午前10時〜午後9時

場所:「PARCO PART1」(東京・渋谷)

入場無料

 リヴリーアイランドの紹介やユーザー作品の展示のほか、タイアップカフェ「Livly Smile Cafe」も。詳細は公式ページで。


古川健介

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 1981年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に、中高生コミュニティー「ミルクカフェ」や2ちゃんねる型レンタル掲示板「したらば」を運営。現在はロケットスタート社長で、コミュニティーを中心にしたネットサービスの立ち上げ、運営を手掛ける。


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