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ピッチのウィルコムが大ピンチ 社長更迭も前途多難

ウィルコムは国内唯一のPHS事業者だが、契約数の減少に歯止めがかからない。筆頭株主である米ファンドにより、前社長が事実上解任され、経営も迷走。次世代通信サービスに賭けているが、その前途は──
2009年08月31日 06時50分 更新

 ピッチのウィルコムがピンチだ。国内で唯一、PHS事業を手掛けるが、契約数の減少に歯止めがかからない。26日には、筆頭株主である投資ファンドの米カーライルにより、喜久川政樹前社長が事実上解任され、経営も迷走している。来月にも開始される次世代通信サービスに賭けるが、その前途は多難だ。

PHSを愛する男

photo トレードマークの“スキンヘッド”姿で新型端末をアピールする喜久川氏

 日本の通信業界を代表する“名物”社長は静かにその職を辞した。記者会見も開かれず、短いプレスリリース一枚が発表されただけだった。喜久川氏は副会長に退き、ソニー出身の久保田幸雄氏が後任に就く。

 「PHSを心から愛する男」。業界関係者は、トレードマークのスキンヘッド姿でウィルコムを引っ張ってきた喜久川氏のことをこう呼ぶ。

 早稲田大学卒業後、第二電電(現KDDI)に入社。その後、ウィルコムの前身であるPHS事業のDDIポケットに出向する。京セラとカーライルがDDIを買収し、ウィルコムと名を変えた後も残った。平成18年10月には、NTTや電力系事業者が相次ぎPHS事業から撤退する中、日本で唯一のPHS事業者となったウィルコムの社長に43歳の若さで就任する。

 出足は好調だった。音声・データ通信の定額プランや、17年に発売した国内初のスマートフォン(高機能携帯電話)「W−ZERO3」が好調で、社長就任から半年後の19年4月には、新規契約数から解約を引いた純増数が500万件超を記録した。

携帯各社が猛攻撃

 しかし、好調は長くは続かない。ウィルコムの強みである音声とデータの定額サービスを照準に、携帯電話各社が猛烈な攻撃を仕掛けてきたことから、ウィルコムの契約件数は減少に転じる。

 攻撃の口火を切ったのはソフトバンクモバイルだ。19年1月に月額980円の安さで午前1時から午後9時まで契約者同士の通話が無料になる「ホワイトプラン」を開始。月額2900円で24時間無料で通話できるサービスを展開していたウィルコムに強烈な打撃を与えた。ソフトバンクはその後、契約純増数で首位をひた走ることになる。

 データ通信でも携帯各社の猛攻を受けた。先行するウィルコムに対し、19年後半までに携帯各社も相次ぎ月額5000円程度の定額サービスを開始。通信速度も毎秒3メガ(メガは100万)ビット超と、数百キロビットのウィルコムよりも大幅に速く、顧客の流出が加速した。

 さらに新参組のイー・モバイルが20年7月に、データ通信サービスを契約すれば小型パソコンを事実上無料でもらるキャンペーンを開始。ウィルコムもPHSの通信機能を搭載し、パソコン同レベルの機能を持つ小型携帯端末「ウィルコム D4」を発売したが、圧倒された。

起死回生なるか

 ウィルコムが、起死回生を賭けるのが10月に商用サービスを開始する次世代無線通信サービス「XGP」だ。19年12月にNTTドコモやソフトバンクと競り合いの末に、総務省から事業免許を取得した。XGPは毎秒20メガビットの高速通信が可能な技術で、速度の遅さに泣き続けたウィルコムにとり待望の切り札だ。

 だが、見通しは楽観できない。同じ高速無線通信ではKDDI系のUQコミュニケーションズが7月からすでに商用サービスを開始。さらに、来年には携帯各社が、毎秒100メガビット超の高速通信サービスを始める。ウィルコムは、両者の間で埋没しかねない危険性がある。

 XGPのもう一つの狙いだった海外展開でも、最有力市場と目された中国で政府がXGPの基盤技術であるPHSではなく、携帯電話を重視する姿勢を表明する誤算に見舞われた。

 5月には喜久川社長が当時の鳩山邦夫総務相らと中国を訪問し、現地企業とXGPの共同研究を行うことで合意したが、どれだけ市場に食い込めるのか、不安は尽きない。

業を煮やしたファンド

 PHS事業が先細りし、XGPの先行きも不透明となるなか、業を煮やしたカーライルの下した決断が、人事の刷新だった。

 喜久川氏の後任の久保田氏は、カーライルの強い意向で社長就任が決まった。カーライルの安達保氏自らが会長に就くことからも、そのいらだちがうかがい知れる。

 人事が公表された際、今春にも実施されると報じられていたカーライルによる増資がいまだに行われていないことも明らかになった。増資はXGPのインフラ整備に必要な資金の調達が目的とされてきた。

 「ウィルコムに追加出資するため、カーライルが米国の親会社を説得する材料として今回の人事刷新を断行した」との見方がもっぱらだ。

 ただ、ファンドであるカーライルは、投資回収のため、いずれかのタイミングでウィルコム株を売却する。「追加投資のかさむXGPサービスにどこまで本気で取り組むつもりかわからない」と、その真意をいぶかる声もある。

 ウィルコム側は今回の人事について、「XGP開始に向けた経営の強化策」と強調。副会長に退いた喜久川氏も「引き続き経営に参画する」と説明する。

 だが、XPGサービスが伸び悩めば、カーライルが早々に見切りをつけ、売却による投資回収を急ぐ可能性も否定できない。ピッチを愛した喜久川氏が心血を注いできたウィルコムは、まさに正念場を迎えている。(黒川信雄)

[産経新聞]

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