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2009年09月02日 20時06分 UPDATE

「僕にとってゲームは悪」だが……富野由悠季氏、ゲーム開発者を鼓舞 (3/6)

[小笠原由依,ITmedia]

「お前ら地球を滅ぼす手助けしているんだぞ」に反論を

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 これは、簡単に乗り越えられるものではない。ゲームの一番怖いところは、ゲームを一般化しすぎたことだと思ってます。

 大宅壮一さんという評論家が、テレビを見過ぎる日本人に対して「1億総白痴化計画」と30〜40年くらい前に言いました。今のゲームの拡大を見ていると、地球全部、30とか40億人を総白痴化するための行為でしかないのでは、と僕は思います。

 30億人の時間を無駄に消費させている、生産活動はそこで止まっているわけです。そんな人類があと100億増えたら、「お前ら地球を滅ぼす手助けしているんだぞ」と言えます。

 この言い方に対して、「わたしが関わっているゲームの仕事は、そうではない」と言い切れるものを作ってほしい。100億人がみんなでマスターベーションみたいなゲームをやっていても地球が滅びないように、人間がちゃんと日常行為を繰り返せるようなゲームを作ってみせてください。

 我々人類には知恵があるという風に信じています。信じているんだったらその知恵を使って。その知恵を使って、時間を消費しないで済むゲームがあれば作って見てください。それが僕からのお願いです。でも、それはきっと無理でしょうね。

「あのジジイを黙らせてやろう」と考えて

 ただ、重要なことがあります。これくらい生意気なことを言う年上がいたら、「お前、本当に腹立つ。何も分かってない。だから俺が、わたしがやってみせる」と言う方に出てきてほしい。人類が歴史を作るってこういうことの繰り返しだったのかなと思っています。

 僕がなぜこんなことしゃべるようになってしまったか、自分でも不思議なんですが、しゃべるようになった経緯は、自覚しています。僕は、たまたまテレビ漫画の仕事につけたから今日まで生き長らえることができました。特別な才能があったわけではない。

 でもこのせりふを今の僕が言うのは危険。「全く才能がなかったら、こんなところでしゃべれるわけないだろ。なんで才能がないと言うんだ。わたしはもっと才能無い。(それは、わたしに対して)死ねって言ってるんじゃないですか」という言い方もできるんです。

 今みたいな言葉のやりとりを聞いて、人間って本当に賢いと思いません? でもこれは、まやかしなんですよ基本的に。

 僕はずっとテレビ漫画の仕事をしてきて、最下等の仕事と言われる中で、こういう人前でしゃべれる自分になることをずっと意識してきた。アニメの仕事をしているやつは、机の前にだけかじりついている。その偏見をとるためにずーっと努力してきた。

 さっき僕は、ゲームに対してとてもひどい言い方をしました。なので、「あのジジイを黙らせてやろう」と、ずーっと考えて、ずっーとやってみてください。そしたら、突破口があるかもしれません。

目標は徹底的に高く

 目標は徹底的に高いところに置いておいてください。高いところに置いておけば、100分の1達成しただけでも、ひょっとしたら10年後、その時代ではトップになれるかもしれないんです。目標値が低ければたかが知れています。100%達成してもこんなもの(低いところを指さす)かもしれない。高みに設定すれば、このくらい(先ほどより高いところを指さす)かもしれない。だったら高みを。そうすると、少なくとも現在の自分に満足をすることはなくなります。

 そして、今からものを考えて開発するときに一番大事な話をしたいと思います。

 例えば個性という問題です。皆さんはおそらく小中学校時代に、あなたらしく君らしく頑張ろう、勉強しようと言われてきたと思います。あなたの個性は得難いものだから大事にしましょう、大事にして育てばきっといいことあるよと、うそをつかれ、教育されてきましたよね?

 大人になって気づくのは、俺に特に個性なんてあるわけねえじゃんということ。はっきり言って、個性も能力もない。前に生きている大人はそれを一番におしえなきゃいけないんです。ところが、とても怖くて教えられない

 なぜかというと、子どもはほめると育つという。ほめ殺しをしたほうが子供や後輩が育つなら、うそをつくしかないんです。だからうそをつくんです。

 子どもは、教育機関や親のうそを前向きに受け止めて、己自身が努力していかないとならない。個性があるというとこだけに縮こまって勉強せず生きていると、僕みたいになっちゃうよと僕は、言います。

 そして、もうちょっと努力していれば、もっとマシになったかもしれない。……でも、本当にそう思う? この(人には個性があるという)話はほとんどうそです。

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