2009年4〜6月期の段階で、モバイルOS市場におけるMicrosoftのシェアは9%前後まで落ち込んだ。10月にはMicrosoftのモバイルOSの新バージョン「Windows Mobile 6.5」がリリースされたが、このアップグレードが2010年までの“つなぎ”にすぎないことを同社幹部は認めている。同社は今年、「Mobile 7」を発表する予定だ。
Mobile 7はMicrosoftのモバイルOSのメジャーアップグレードとなるものだが、同社はこれまで、その詳細をベールに包んできた。しかしGoogle、Apple、RIMなど、この分野で活躍する多彩な競合企業からのプレッシャーを前に、市場シェア拡大を狙うMobile 7の前途は非常に険しいものとなりそうだ。
この狙いを達成するのは不可能だと言い切る人もいる。Strategic News Serviceのマーク・アンダーソン氏は、12月10日付の米New York Timesの記事で「携帯分野でのMicrosoftの敗北を宣言する時がきた。彼らはすぐに撤退すべきだ」と述べ、大きな反響を呼んだ。「携帯電話はコンシューマーアイテムであり、MicrosoftはコンシューマーのDNAを持っていない」と同氏は指摘した。
アンダーソン氏の指摘が正しく、Windows Mobileが落伍者になるのか、それともMobile 7が携帯電話市場でシェアを維持、あるいは徐々に拡大するのかどうかという疑問は、今年に最終的な決着が付くだろう。
Microsoftは主としてデスクトップ上に事業を構築した。しかし同社は、クラウドコンピューティングの普及に伴うパラダイムシフトを受け入れる方向に踏み出した。今年は、その取り組みの一部が実を結ぶだろう。
2010年1月1日、MicrosoftのクラウドプラットフォームWindows Azureが“本格始動”した。このプラットフォームは3つの部分で構成され、それらが連係してWebアプリケーションとサービスを実現する。3つの構成要素とは、Windows Azure(サービスとしてのOS)、SQL Azure(クラウドベースのリレーショナルデータベース)、そしてセキュアな接続およびアプリケーションの連係アクセスコントロールを実現する.NETサービスだ。
Azureサービスでは、従量課金方式、サブスクリプション、ボリュームライセンスという3種類の支払い方式が用意される。この分野でMicrosoftと競合するのは米AmazonとGoogleだ。
米市場調査会社Gartnerによると、クラウドサービスの潜在的な市場規模は1500億ドルに上るため、これらの企業が市場シェアを求めて戦うのも当然だといえる。Microsoftの参入は、企業市場でのクラウドの普及を促進する可能性がある。
米Gartnerのアナリスト、レイ・バルデス氏は、Azureプラットフォームが2008年に初めて発表されたとき、「Microsoft製品で社内を統一しており、ITスタッフはMicrosoftのツールとAPIしか知らないという企業は多い。AmazonとGoogleはこれらの市場を少しずつ切り崩してはいるが、Microsoftの基盤は強固だ」と米eWEEKの取材で語った。
Microsoftは今年、エンタープライズクラウド市場で好位置を確保する可能性があるが、同社のそのほかのクラウドベースの取り組みは危険な賭けになりそうだ。Google Appsへの対抗を狙うMicrosoftは、Windows Live登録ユーザーにブラウザアクセス版のOneNote、Excel、Word、PowerPointを提供する予定だ。これらのWebベースアプリケーションは、今後登場する「Office 2010」のフル機能を備えてはいないが、Microsoftでは、多数のユーザーがGoogleの製品よりも自社のクラウドプロダクティビティスイートの方に引き寄せられるものと期待しているようだ。
しかしコンシューマー、地方政府、企業の間でGoogle Appsが注目を集めている現実を見れば、Microsoftは自社ブランドのWebベースプロダクティビティ製品を普及させるのに少し苦労することになるかもしれない。だがレドモンドにはあまり選択の余地はない。Googleが今年、「Google Chrome OS」を通じて企業およびコンシューマーの間でGoogle Appsをさらに普及させることを狙っているからだ。Google Chrome OSは同社が開発中のブラウザベースのOSだ。当初はNetbook向けだが、より本格的なPCでの採用も目指している。しかしOfficeのブラウザアクセス版の登場が、Googleのインパクトを鈍らせる可能性もある。
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