ITmedia NEWS >

最新調査にみる中堅・中小企業のIT投資動向Weekly Memo(1/2 ページ)

» 2010年05月10日 08時06分 公開
[松岡功ITmedia]

歯止めがかかりつつあるIT投資抑制傾向

 景気の動きはなお厳しい情勢にあるが、回復への期待感は膨らみつつある。政府が先頃発表した4月の月例経済報告によると「景気は着実に持ち直してきているが、なお自律性は弱く、失業率が高水準にあるなど厳しい状況にある」という。

 企業の業況については「改善している」とし、設備投資も下げ止まりつつあるというが、中小企業では先行きに慎重な見方がまだまだ根強いようだ。景気の持ち直しの動きに期待したいところだが、ここにきて、ギリシャの財政危機をきっかけにした欧州発の信用不安が世界の金融市場を大きく揺さぶっており、景気回復に水をさすのではないかと懸念されている。

 こうした中で、企業のIT投資の動きは今後どうなっていくのか。特に国内の中堅・中小企業におけるIT投資動向について、IDC Japanとノークリサーチが相次いで調査結果を発表したので、それらを基に考察してみたい。

 まず、IDC Japanが3月に実施した調査結果によると、2010年度のIT投資予算では、2009年度から「減少する」と回答した企業の割合は35.3%で、「増加する」と回答した企業の割合29.9%を上回った。この結果から、同社では「IT投資を抑制する企業が依然として多い」としながらも、2009年7月に実施した前回の調査結果では「減少する」が41.4%、「増加する」が28.0%であったことから、「前回より改善傾向にある」としている。

 また、2011年度IT投資予算の前年度比増減率では、「増加する」と回答した企業の割合が33.6%となり、「減少する」と回答した企業の割合28.5%を上回った。この結果から、「2008年度からの中堅・中小企業のIT投資抑制傾向に歯止めがかかりつつある」と同社ではみている。

 IT投資における重点項目では、これまでも継続的に重点投資されてきたセキュリティ強化関連の項目の回答率が高いものの、コンプライアンス対策関連の項目の回答率は2009年2月調査時と比較して下がったという。また、今回の調査では、基幹系システムやERPなどバックオフィス系システムの刷新に関連する回答率が前回の調査時よりも上がっており、「これまで凍結されていたシステム刷新の再開を検討する企業が徐々に増加している」とみている。

 経営課題としては、売り上げやコストの拡大に関連する項目の回答率がこれまでと同様に高かったが、今回の調査では、人材不足、従業員教育といった人材に関する項目の回答率も高かったという。この結果から、同社では「中堅・中小企業でも今後の景気回復を見込み、体制強化を検討するところが徐々に増加している。しかし、景気回復に伴って人材の課題がさらに深刻化する可能性が高い。したがって、ITベンダーはユーザー企業の課題を解決すべく、業務委託を含めた包括的なソリューションの提案が重要になる」と分析している。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.