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最新調査にみる中堅・中小企業のIT投資動向Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年05月10日 08時06分 公開
[松岡功ITmedia]
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クラウドサービスの有効利用に期待

 一方、ノークリサーチが2月に実施した調査結果でも、中堅・中小企業のIT投資は回復傾向にあるようだ。同社によると、過去、2009年5月と8月に実施した調査では「IT投資意欲指数(IT投資DI)」そのものは依然マイナスだったものの、好転の動きが見られた。その後、同年11月の調査ではいったん下降へと転じる厳しい状況となったが、今回(2010年2月)には依然マイナス値を示しつつも、再び好転する方向へと推移し始めているという。

IT投資DIの変化 IT投資DIの変化(年商別、ノークリサーチ調査より)

 ちなみにIT投資DIは、前回調査時点と比較した場合のIT投資予算額の変化を「増える」「同程度」「減る」の3段階の設問とし、「増える」と「減る」の差で指標化した数値である。

 2009年2月から2010年2月までのIT投資DIの推移をみると、年商5〜50億円の中堅下位企業と年商50〜100億円の中堅中位企業において回復幅が大きくなっている。いずれの年商帯においても新規投資を差し控え、システム更新や法令順守などの「不可避の投資」のみに絞る傾向が強いという。

 投資対象をみると、年商5億円未満ではWindows 7のリリースを契機としたPCハードウェアの入れ替えが行われつつあるものの、台数が少ないために投資金額規模は相対的に小さい。年商5〜100億円ではPCハードウェアに加えて基幹系システムの更新時期を迎えているところが多いことから、IT投資DI値も高くなっているとしている。

 また、年商100〜500億円の企業においてもシステム更新のニーズを抱える点は同じだが、複数年度にわたる経営計画やIFRSなどの法改正を見据えた中期的な観点での検討をまず行うことを優先し、IT投資に対して慎重な姿勢を示す傾向が強くなっているという。

 こうした状況を踏まえ、同社では「ソリューションを提供する側としては、単なる更新需要の充足にとどまらず、レガシーマイグレーションによる基幹系システム更新と併せたサーバ仮想化によるITリソースの全体最適化提案や、PCハードウェア更新に伴うPC運用管理、資産管理などの提案といった付加価値の訴求が重要なポイントになる」とみている。

 こうしてみると、表現の仕方は違うが、IDC Japanとノークリサーチの提言は同じ方向性を示しているといえる。その1つの解決法がクラウドサービスの有効利用だろう。回復の兆しがみられるIT投資の動向ととともに、その内容の変化にも大いに注目したい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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