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最新調査にみる企業のIT投資動向Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年06月21日 08時06分 公開
[松岡功,ITmedia]
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投資目的に経営管理機能強化が急浮上

 企業のIT投資に回復の兆しが出てきているのは、NRIの調査結果でも見て取れる。同社が5月26日に発表した企業のIT活用実態調査によると、IT投資は2009年度が底で、2010年度は回復に転じそうだ。

 今回で7回目となる同調査は2009年11月に実施。国内に本社がある売上高上位の2970社に依頼し、527社から回答を得た。それによると、09年度にIT投資を「増やす」と答えた企業は22.5%と、08年度に比べて14.9ポイント減っており、07年度から2年連続の減少となった(図参照)。

IT投資額の増減(前年比)の推移 IT投資額の増減(前年比)の推移(出典:野村総合研究所「ユーザー企業のIT活用実態調査(2009年)」)

 一方、10年度の予想では「増やす」と答えた企業が26.7%と、09年度比4.2ポイント増加した。V字回復とは行かないまでも、09年度を底に10年度は回復の兆しが見え始めた格好だ。

 ちなみに同調査では、重視するIT投資の目的についても03年から09年まで7年にわたって集計しているが、前述したIT投資の動きに伴って、その内容も大きく変化しているようだ。

 具体的には、直近の09年ではおよそ4割の企業が「業務効率化支援」「経営管理機能強化支援」「業務プロセス標準化支援」の3つを挙げている。業務効率化と業務プロセス標準化については以前から重視されていたが、経営管理機能強化については07年時点で2割足らずだったのが08年と09年では一気に倍増した格好だ。

 こうした状況から、企業が重視するIT投資の目的は、効率化やコスト削減、ガバナンスがキーワードといえそうだ。その一方で、ITによる「事業・サービス創造支援」や「情報活用支援」といった、いわばビジネス価値を高めるためのIT投資は年々低下しているという。

 NRIでは今回の調査結果を踏まえ、「09年度における企業のIT運営は我慢を余儀なくされたが、これからはアジャイル(俊敏)な経営への備えが重視される。そのためには、ガバナンスの整備、メソッドの活用、アーキテクチャの最適化、ケイパビリティ(改革実行能力)の向上という4つの方策が必要となる」と指摘している。

 IDC JapanとNRIの調査結果から、企業のIT投資に回復の兆しが出てきていることが明らかになった。ただ、クラウド利用に代表されるように、投資目的の内容はこれから大きく変わっていくだろう。IT投資の動向とともに、その内容の変化にも注目したい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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