SFでプログレッシブな「初音ミク」を語り尽くす：難波弘之 対 野尻抱介（2/3 ページ）

[杜松百舌，ITmedia]

杜松　私がうかがってるのはすずきPです。なんでまた！ってびっくりしたんですけど。

野尻　すずきPってあのすずきPですよね。

※すずきP：VOCALOIDプロデューサー（P）。がくっぽいどとその女声化「がくこ」使いとしても知られる。「【鏡音リン】破滅の予感とエクスタシー【巡音ルカオリジナル曲】」

難波　彼が僕がやってるNuovo Immigratoのファンなんですよ。

※Nuovo Immigrato：ヌーヴォ・イミグラート。難波氏とノヴェラの五十嵐“アンジー”久勝を中心としたプログレユニット。

野尻　ええ、ええ、ええ。

難波　それで彼の「破滅の予感とエクスタシー」を聴いて。それで僕が彼の曲をちょっとアレンジして送ったらすごいウケてくれたので。

杜松　すごい聴きたいですそれ……！

難波　面白いですよね、やっぱり。プロの音楽家の発想とぜんぜん違う。特に詩が、やっぱりプロの作詞家では絶対ありえない作詞だし。

野尻さん

野尻　すずきさんはアマチュア畑の人なのかな。本職は何をなさってるんですか？

杜松　音楽の仕事をされているわけではないはず、ですね……IT系のお仕事、なのかな、普通に平日にスーツ着てる職種の方です。

野尻　おいくつくらいなんですか

杜松　若いです確か。

野尻　30代以下？

杜松　以下ですねー。

初音ミクは「音域の制約のない女の子のアイドル」

松尾　難波さんってこれまですごいボーカリストとずっとやられてきたじゃないですか、金子マリ、山下達郎、人見元基とか……。

難波　そうなんですよね、幸か不幸か、業の深そうな方ばかりで……。うまいんだけどめんどくさい、っていう……（笑）

松尾　難波さんのWebページで読んだエピソードなんですが、1stソロアルバム「Sense of Wonder」の時にスタジオに山下達郎さんと吉田美奈子さんがいるところで、難波さんがボーカルをとってらっしゃいますよね。

難波　そうなんですよ！　ゲストボーカルを入れてやろうと思ってたら、ディレクターがいきなり、「自分のアルバムなんだから自分で歌ったら？」とか言いだして。そうだそうだみたいな話になっちゃって。ええーっ歌、歌ったことないよみたいな感じだったのに。今で言ったら大変なことですよね。

松尾　大変なことだと思います。ちょっと拷問的なプレイです。

難波　ねえ?!　達郎、美奈子がニヤニヤ笑いながら見てる前で歌わされる、って、ねえ。

松尾　いや僕は難波さんのボーカルもちろん好きなんですけれども。その歌いあげる系の人達とも一緒にやっている難波さんが一緒にやるボーカリストとして、初音ミクなどのVOCALOIDはどうなんだろうと。比べたりするのかな、と。

難波　あーなるほど。でも自分の感じでは、昔アイドルのアレンジやってたりアイドルに曲書いたりしてた時の感じにちょっと近いのかも。だから音域の制約のない女の子のアイドルに曲書いてる感じ。

杜松　佐久間正英さんも似たようなことおっしゃってましたね。そういうアイドル系の仕事を思い出すって。

※佐久間正英：伝説的プログレバンド「四人囃子」、テクノユニット「プラスチックス」を経て現在はプロデューサーを中心とした活動をしているが、VOCALOIDも始め、最近、自身のレコード会社もスタートした。「ボカロで「自由」を手に入れた　佐久間正英が語る音楽の未来」「アーティスト印税、安すぎた？　大物プロデューサーの決断」

難波　そういう感じですよね。あとやっぱり、日本特有のオタク文化っぽいもの、人格のないものに対して自分で人格付けしていくみたいな、あれがやっぱ面白いですよね。

野尻　あーはいはい。