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iPadでアナログシンセの名器復活! 「iMS-20」開発チームに聞いてみた(3/6 ページ)

» 2010年12月20日 16時34分 公開
[松尾公也,ITmedia]

本気で取り組んでいる

松尾:iMS-20はパワー的にiPadのどのくらいを使ってるんですか?

佐藤:もうこれが限界です(笑)

中島:けっこうがんばったんですよ(笑)

松尾:人の欲望には限界がなくて……。ベースを別トラックでほしいよね、とか。どこでパワーを取られてるんですか?

福田::MS-20のシンセ部分ですね。パッチングとかじゃなくて、全体。ここが重い、とかではなく。これだけの複雑なモジュールの計算が入っていくので、アベレージで必要という感じです。この1音だけでCPUのかなりのパワーを使っているんですよ。ただそこはMS-20である以上、どうしても譲れなかったので。

松尾:DS-10やDS-10 PLUSでは最高4トラックまでできるのに、という意見については?

佐藤:実現できたらよかったんですけどね。

松尾:それでは中島さん、苦労した部分を。

中島:モジュール毎にコードの最適化を施したところでしょうか。

佐藤:めげそうになってたところに、「絶対に完全再現でお願いします」と言って(笑)

佐野:やる前にはなんとなくいけると思ってました?

中島:最初に動かしたときがあったんですけど、ヤバイな、と思いましたね(笑)

佐野:動かす前はまあまあいけるだろう、と。

佐藤:この段階では福田君、「行けると思いますよ」と。

中島:1音鳴らしたら、これはやばい、となって(笑)

佐藤:そこから再スタートですよ。

松尾:ドラムトラックをサンプリングで6トラックというのはそれを補完する意味で?

佐藤:いや、ドラムトラックはもともと10トラックにしようとしてましたから。

松尾:ほんとだ。10って書いてある……。

佐藤:今の仕様はiPadにおけるマキシマムに挑戦した結果なんです。

佐野:ぼくも最初にiMS-20を見たときは感じましたよね。あ、本気で取り組んでいるんだな、って(笑)。同時にその突き放した感じもなくならないでほしいと思いましたね。立ち上げた瞬間に、「ああ、よくできてる」という印象ではない。なにしていいかわかんない、みたいな。そう思わせない凄みがなくならなければいいな、と思ったんですが、それがどんどん増えてった(笑)。

伝説的アナログ・ステップ・シーケンサーSQ-10を組み込む

photo MS-20とアナログシーケンサーSQ-10(上)

松尾:SQ-10の話にいきましょうか。これの言い出しっぺは?

佐藤:福田君ですね。「シーケンサーどうしようか…?」って言ったら、「実はあるんですよ」って言って、いっしょに昼飯を食いに。

福田:2台は難しいということが分かって、ここにキーとなる面白いものを入れたいな、と考えていたんです。そこでSQ-10をと。すんなりMS-20が複数台動いていたら、SQ-10はなかったかもしれませんよね。

佐藤:マニュアルをダウンロードして。これはすごいって。

福田:実際に使ってみると、かなり難しいんですよね。そこで、当時のSQ-10でできることはそのまま残しつつも、プラスαでいろんな人が操作できる仕様に落とし込むことにしました。

松尾:ステップ数が12から16に変わってますけど、一番変わったところは?

福田:チャンネルセットという概念を入れたところですかね。ボルテージだけじゃなくて。ノートだとノートをいじらせるとか、より直感的にいじれるようにしました。

佐藤:つながなくてもシーケンスが鳴るというのも大きいんじゃないですかね。

福田:もともとSQ-10はマルチプルトリガーアウトからMS-20のトリガーインに入れるのが一般的なセッティングなんですけど、まずこれに気づくかどうか。場合によってはそれに気づかず終わってしまうという(笑)。だからここはかなり議論がありましたね。

松尾:やさしくしちゃっていいものか。

photo

福田:はい。あと、マルチプルトリガーアウトの位置が左側なので、左上から右下につなぐと、常にケーブルがカットオフフリーケンシーのノブの上にかぶってるんですよ(笑)ただ、マルチプルトリガーアウトは左側に配置したくて。そういったUI都合もあったりして、最終的には内部結線するということにしました。

松尾:最初の画面では出てこなくて、パネルをドラッグしないとSQ-10は出てきませんよね。

佐藤:チラ見せしています(笑)

福田:徐々にたどっていって、先に何かがあるという感覚がいいですよね。そこにいくとぜんぜん違うものが出てきてなんじゃこりゃーと(笑)。こういう驚きが何重にもかさなっているのがおもしろいですね。

photo 超レアなSQ-10のマニュアル。MS-20のマニュアルも参照

松尾:SQ-10は実際に使っていたんですか?

佐藤:見たことはあったけど、使ったことはなかった。

福田:そういう意味では新鮮でしたね。アナログシーケンサーというのはこういうものだったんだって。

佐藤:松尾さんは?

松尾:いやー、触ったことないですよ。32年を経てやっと触れたという。

佐藤:そういう人多いですよね。

松尾:MS-20までは買うけど。あと、VC-10とかもほしかったですけどね。MS-50とかも。

佐野:松前(公高)さんのライブで見せてもらったんですけど、いいたたずまいで。

松尾:鍵盤がない!

佐野:いいですねー(笑)。

福田:メーターがまたいいですね。

松尾:iMS-20のマニュアルをよく読めばMS-50が追加モジュールとしてアプリ内課金で用意されているとか期待してました。

※MS-50はMS-20から鍵盤部分を外して拡張性を高めた別売のアナログシンセサイザー。MS-20、SQ-10と同時期に発売された。

佐野:おー、これはぼくも知らない仕様ですね。ありかもしれませんよ(笑)。すべてのパラメータにタッチすると、みたいな(笑)。

松尾:まあ、パワーは使い切ってるということなんで(笑)

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