在宅勤務導入を検討しているものの、さまざまな不安要因に惑わされて、その決断をできないままでいる企業担当者は決して少なくない。高橋氏はそういった企業に対し、まずはトライアルで部分的/限定的に実施してみることを推奨する。
「まったくノウハウのない会社が、いきなり全社レベルで在宅勤務を導入するのは難しいです。トライアルのメリットは、実際にやってみることで最初にあれこれ悩んでいた問題(従業員がサボるのでは、情報が漏洩するのでは、など)がほとんど起きないという事実に気づくこと。やってみると意外と大丈夫だったというケースが多いのです」と高橋氏。
案ずるより産むが易しとはまさにこのことだろう。もちろん、トライアルの結果、自社には向いていない、あるいは時期尚早と判断したのであれば無理に導入する必要はない。ちなみに日本HPも2007年のフレックスワークプレイス正式導入の前にトライアルを実施している。
さらに在宅勤務は万人に向く働き方ではない、ということに対する理解も必要だという。
「オフィスで働きたいという考え方の人にはオフィスで働いてもらえばいいんです。嫌がる従業員に無理に勧めたりしないこと。会社にはいろいろな考え方の人がいますから、全社レベルで一斉導入するよりも、現場のことをよく理解しているチーム長に運用の判断を任せたほうがスムースに進みます」(高橋氏)
日本HPの場合、人事考課のシステムが「働いた時間ではなく、期首に立てた目標をどの程度達成したかで評価される」という点も大きい。オフィスで席についていることが業務という考え方が強い会社は、まずそこを変えるところから始めないと厳しいだろう。
3月11日の大地震直後、日本HPは3日間に渡って全従業員に自宅待機を命じたが、フレックスワークプレイス制度が浸透していたため、ほとんどの業務が滞ることなく継続できたという。
「普段やり慣れていないことを、震災のような混乱時にやろうとしてもまず無理」と高橋氏は言うが、まさしくその通りだろう。被災したときだけ在宅勤務を適用しようとしても、うまくいかない可能性のほうが高い。避難訓練のように、半年に一度、限定的に在宅勤務を実施してみるなど、定期的なトライアルを繰り返しながら、自社にあった方法を見つけていくのも手だろう。
日本HP自身、このフレックスワークプレイス制度はまだ“進化中”のシステムだとしている。「時代によって働き方が変わっていくのは当たり前。当社の場合、新社屋に移ってから、在宅勤務制度をより積極的に運用しているが、社員全員がワンチームという感覚はかえって強くなったと感じる」と高橋氏は振り返る。在宅勤務の理想型ともいえる姿かもしれない。
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