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「ソーシャル」と「インタレスト」、2つの「グラフ」を結ぶ──ミクシィとTwitter、提携の狙い

» 2011年11月30日 21時16分 公開
[ITmedia]
photo Twitter Japanの近藤代表(左)とミクシィの笠原社長

 ミクシィとTwitterが11月30日に発表した提携のきっかけは東日本大震災だったという。友人・知人のつながりによる「ソーシャルグラフ」を持つmixiと、興味・関心のある人やモノなどの情報でつながるTwitterの「インタレストグラフ」を組み合わせ、身近な関係から興味関心に基づく広がりのある関係まで、「グラフ」間の相互流入を促す新サービス・ビジネスの開発に両社で取り組んで行く。

 ミクシィの笠原健治社長は「mixiとTwitterが目指している方向には違いがあり、組み合わせていくことが可能だ」と話し、Twitterの日本法人・Twitter Japanの近藤正晃ジェームズ日本代表は「Twitterにとって日本は最も重要な市場。mixiのソーシャルグラフとTwitterのインタレストグラフを組み合わせ、さまざまなことをやっていきたい」と意気込んだ。

「最適なグラフ」に情報を流していく

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 提携内容は(1)両社のAPIを活用した新サービス・ビジネスの共同開発と、(2)mixiの既存サービスにおける連携──の2つ。友人・知人間での情報共有・コミュニケーション促進に強いmixiと、個々のユーザーにとって価値の高い情報との出合いを促すプラットフォームとしてのTwitterという、「異なるグラフ」を組み合わせ、その時々で「最適なグラフ」に情報を流していくという考え方でサービス開発を進めるとしている。

 第1弾として「mixi Xmas 2011」を同日公開した。友人のページに飾った靴下のベルを鳴らし合ってポイントをためるとレベルアップし、靴下を飾るアイテムがもらえてあり、協賛企業のプレゼント応募券がもらえるというソーシャルキャンペーン。今年で3回目だが、新たにTwitterへの投稿に対応。自動的に専用ハッシュタグを付けた状態で投稿し、Twitterユーザーへの情報発信が可能になるとしている。

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 来年1月には、位置情報共有アプリ「Pelo」(ペロ)をリリース。スマートフォンのGPS機能を使って位置情報を共有できるアプリだが、mixiとTwitterの両方のIDで利用でき、共有先としてどちらかのサービスだけを選ぶことが可能になっている。身近な友人に知らせたい場合はmixiで、友人・知人を越えて共有したい場合はTwitterで、といった使い方ができ、災害時の安否確認インフラとしての利用も期待する。

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 Twitterは連携で、10月から販売している広告「プロモトレンド」の利用拡大を狙う。Twitter上の流行ワードを表示する「トレンド」の上部にスポンサーが設定したキーワードを表示できるもので、「TwitterのUIに自然に溶け込み、クリック率が高い。拡散力がある」(近藤代表)。mixi Xmasでも12月2日と18日にプロモトレンドを使った仕掛けを予定しており、両サービスでユーザーが流入し合い、「バイラルが加速していく」仕組みを作る。企業がソーシャルメディア向けマーケティングなどで活用できる共同の広告商品でも活用していく考えだ。

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 既存サービスでは、既にmixiのつぶやきとTwitterのツイートの相互連携とmixiページでのTwitter連携機能が利用できる。今後さらに、Twitterで相互フォローしている人にmixiの友人申請ができる機能、mixi日記の投稿完了後にTwitterフォロワーに共有する連携機能を実装する予定だ。

 ただ、既存サービスとの連携機能は自動的にオンになることはなく、利用するかどうかはユーザーが自由に選択可能であることを強調する。「完全にオプトインであり、強制的に連携するものではない。ユーザーの判断で選んでいただける」(笠原健治社長)という。

 mixiとの連携機能や共同の広告商品などは年明け早々にもリリースしていきたい考えだ。

きっかけは震災の経験

 「近藤代表と何度か話す機会があり、震災の話が最初だった」──ミクシィの笠原社長によると、両社の提携のきっかけは東日本大震災の経験だったという。

 震災後、さまざまな情報を求めるユーザーがmixiもTwitterを活用したが、mixiでは地域ごとのコミュニティーを友人・知人の安否確認に活用したり、個人商店の営業時間の情報など、ローカルで身近な情報が飛び交った(関連記事:地震、その時mixiは 「頑張っぺし」――集まる被災者の声、飛び交う超ローカル情報)。一方、Twitterはニュースや被災状況、余震、原子力発電所事故、計画停電の情報などをいち早く入手できる手段として存在感を高めた。

photo Peloによる災害時の情報共有のイメージ

 「震災時にもっと互いに情報交換していれば、もっと密に連携していればもっといいサービスを提供できたのでは」という対話がきっかけになり、ソーシャルグラフとインタレストグラフという、両社の違いと強みを組み合わせていく提携に発展したという。笠原社長は「ユーザーは複数のソーシャルサービスを使って当たり前。連携によって交流が生まれ、両サービスがさらに発展していく流れを考えている」と話す。

 「mixiタウン」構想を掲げる同社は、プライベートな交流の場である「ホーム」に対して、パブリックな場である「タウン」の強化を進めており、8月末には「mixiページ」をリリースした。Twitterとの提携はタウンの活性化にもつながる。

 Twitterにとっては日本は最重要市場の1つ。世界のTwitterアクティブユーザーは1.2億人いるが、ツイートされる言語のうち英語の次に多いのは日本語だ。日本法人を設立して広告商品の自社販売にも乗り出しており、近藤代表は「日本に根ざしたサービスを展開していきたい」と話す。「やっぱり日本のSNSのパイオニア」(近藤代表)というmixiと組むことで、日本市場に合わせた利用の促進や広告販売力の強化といった狙いもある。

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