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東京国立博物館をとらえたGoogleの秘密兵器──「アートプロジェクト」撮影現場の奔走(2/3 ページ)

» 2012年04月20日 16時20分 公開
[榊原有希,ITmedia]

 Googleのスタッフを迎えた東京国立博物館も、かつてない対応に追われていた。博物館の展示品には、「寄託品」と呼ばれるものが少なくない。文化財として価値はあるが、「寺社や個人では保管が難しい」「広く国民に公開してほしい」といった理由で博物館に寄託されたものだ。つまり、寄託品の所有権は博物館になく、撮影の許諾を得ることが難しい。今回、甲冑の寄託品が多い6室は、展示室自体の撮影が見送られた。

photo ストリートビュー形式で展示室を見ることができる

 それ以外の展示室では、寄託品を館蔵品に入れ替え、撮影日だけの展示を作り上げた。キャプションも全て変更。「彫刻」がテーマで、2メートルを超える大きな仏像もある11室も例外ではなく、担当職員たちは朝から総出で展示替えに奔走した。一級の館蔵品が勢揃いしたが、常設の文化総合展を楽しみにして来る来館者のため、撮影が終われば、その日のうちに普段の展示に戻される。図らずしも、ストリートビューだけで鑑賞できる“特別展”となった。

 結局、休館日にのべ5日間をかけて撮影は行われた。東京国立博物館では、本館の総合文化展と法隆寺宝物館の展示室をストリートビューで観覧できる他、国宝15点、重要文化財43点を含む105点の作品画像が無事に公開された。国宝「観楓図屏風」(狩野秀頼筆、室町〜安土桃山時代・16世紀)については、70億画素という超高解像度画像で細部まで楽しむことができる。

 「海外のGoogleの方にもヒアリングして、日本らしい作品を選びました。それが、「観楓図屏風」でした。京都嵐山の風景、紅葉狩りの風俗を描いた国宝です。また、これまでのアートプロジェクトに参加している美術館は平面作品が多く、工芸作品が少ない。日本文化が誇るすばらしい工芸作品をぜひ見て頂きたいです」と東京国立博物館の小林牧広報室長は自信をみせる。

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