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「研究してみた」に価値を──「ニコニコ学会β」が目指す新しい学会のかたち(2/2 ページ)

» 2012年04月26日 15時30分 公開
[榊原有希,ITmedia]
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日本の頭脳に労働対価を

 成功を収めたニコニコ学会βだが、唯一、運営費の赤字という課題が残った。「そんなにスポンサーは集まらないという現実がありました。同じ体制で2回目、3回目をどうやって開催するか議論しました。普通の学会は、学会員が払った年会費で運営されていますが、研究者の間でポジティブに受け取られていません。しかし、参加者やニコニコ動画の視聴者からお金を集めることにも無理がある。これらの中間的な方法を探しました」と江渡さんは話す。

 そこで、クラウドファンドレイジングと呼ばれる、ネット上で支援金を募る方法を採用。ファンドレイジングとは、民間の非営利団体が活動資金を集めることをいう。国内のクラウドファンディングサイト「READY FOR?」で「誰もが自由に研究をする新しい学会ニコニコ学会βプロジェクト」として運営費への支援を呼びかけたところ、4月22日に目標額の100万円を達成できた。

 「開催前に達成できたことは、見る前から“研究してみた”に対して価値があると言ってもらえたようで嬉しいです。研究者のモチベーションも上がります。資金調達の目的は、単に2回目を開催するだけでなく、今後、ニコニコ学会を持続的な新しい学会組織として運営してゆくためです」と岡本さん。どの分野の学会も、一部の研究者のただ働きによって運営されているのが現状で、「これは健全ではありません。日本の頭脳に対して、労働対価をきちんと払えるエコシステムを作らなければ。ニコニコ学会βは、その可能性を広げます」と期待をかける。

photo ニコニコ学会βのサイト

 研究の未来を展望するニコニコ学会β。今回は2日に渡り、8つのセッションが行われる。メディアアーティストである八谷和彦さんや「明和電機」の土佐信道さんも登場するなど見所は多い。「セッションでは、ロボットや未来の乗り物について取り上げます。前回はコンピューター寄りの研究が多かったのですが、今回は社会学的見地を持っている人も呼びました。『Winny』開発者の金子勇さんに開発や裁判の経験を語って頂き、議論します。幅広い研究の場になれば」と江渡さんは話している。

 ニコニコ学会βは、ニコニコ超会議の入場料で観覧可能で、会場では第1回ニコニコ学会βをまとめた書籍も先行販売されるという。

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