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スラムダンクに学ぶ勝ち負けの真髄――カヤック・柳澤社長キーマン、本を語る【仕事が面白くてたまらなくなる3冊】(2/2 ページ)

» 2012年06月27日 11時00分 公開
[取材・文/伏見学,ITmedia]
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「企業参謀」

 大半の人たちは社会人になるなどして何となく仕事を始めています。将棋や囲碁はルールを知らないと始められませんが、実は仕事も同じなのです。よく企業で「戦略」という言葉が使われますが、戦略が何かを理解せずに仕事をしてもうまくいきません。大前研一さんが書いたこの「企業参謀」は、戦略や戦術とは何ぞやという、囲碁でいう定石のようなことを教えてくれます。

大前研一著「企業参謀」(講談社文庫) 大前研一著「企業参謀」(講談社文庫)

 新規事業を立ち上げたり、既存事業を伸ばしたりしていくとき、何も分からずに突き進むよりも、定石やフレームワークを知っておいた方がいいと思います。その上に独創的なアイデアなどを乗せていくことが重要です。新規事業に携わるなど、ある程度の実践を経験してから読むといいでしょう。戦略全般に書かれたものの中では網羅性が非常に高い本だといえます。

 カヤックは組織戦略から入っている会社なので、それに関連する書籍はたくさん読んでいましたが、今後事業をどう伸ばしていくかを考えていたときにこの本を読みました。大きく企業の戦略には、どうやって組織を優れたものにするかという組織戦略と、事業をどのように伸ばしていくかという事業戦略の2つがあります。僕は組織戦略の上に事業戦略が乗っかってくるのが良いと思っていましたが、まず事業戦略を立てて、それに適した人材を獲得するという企業もあります。

 最初は、人が集まり、楽しい組織を作ることに注力していたので、出てきた事業をどう伸ばすかというのはあまり考えていませんでした。ところが、事業戦略の本を読み、定石を学んだらビジネスが伸び始めてきたので、ビジネスにおいてはいずれも大事なのだなと感じました。

「アイデアは考えるな。」

 「アイデアがたくさんある人は深刻にならない」ということをキーワードに掲げて、どうやったらアイデアが出るようになるか、そのノウハウを書いた本です。元気になろう、楽しく仕事をしようという思いでつづりました。

柳澤大輔著「アイデアは考えるな。」(日経BP社) 柳澤大輔著「アイデアは考えるな。」(日経BP社)

 アイデアというのは、必ずしも自分で出さなくてもいいと思っています。カヤックはチームで仕事をすることが多いので、もし自分にアイデアがなければ、自分がヒントになって、ほかのメンバーにアイデアを出してもらえばいいわけです。アイデアがたくさん出る人と一緒にいるというスタイルでもいいのです。コラボレーションすることでアイデアが生まれるという感覚を味わえば、その場にいる意味があるし、アイデアがたくさん出てくると元気になれるということも身をもって理解できるはずです。ちょっとした疑似体験であればブレインストーミングなどで簡単にできます。

 アイデアがいっぱいある人はポジティブですよね。例えば仕事で行き詰ったとき、僕も「打つ手ないな」と思ったりするのですが、アイデアが出てくると「いけるかも!」と考え方がポジティブに変わります。この感覚は成功体験を繰り返し、積み重ねていかないと身に付きません。一度くらいの成功体験だと、次に大きな壁にぶつかって「もう無理だ」と思ってしまいます。

 でも、実はアイデアを出すとその壁は突破できるのです。少なくとも、もう駄目だと思っているときよりもアイデアが出ると前進します。ただし、アイデアを出すことの価値を本当に心の底から信じられるようになるには、それを何度も繰り返さないといけません。ものにするまでには時間がかかるのです。

 苦しいときにアイデアを出せば元気になるという世界もあるのですが、一方で、それを忘れざるを得ない、とにかく目の前のことに集中してアイデアを出せという、ストレス解消としての意味合いも、アイデアを出すという行為にはあるのかもしれませんね。

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