節電の日本を世界に発信――データセンター・アワードの見どころを聞いた「ラック数本規模からでも応募してほしい」

グリーン・グリッドが主催する「グリーン・グリッド データセンター・アワード2012」の募集が今年も始まった。規模や業種・業態を問わず、日本国内でデータセンターを運用する企業・団体の応募を受け付けており、単に消費電力をどれだけ削減できたかという結果だけでなく、その消費電力低減に向けた取り組みも評価の対象となる。応募受付は9月7日まで、表彰式は10月上旬に予定されている。

» 2012年07月23日 10時00分 公開
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 グリーン・グリッドは、2007年に米国で立ち上がったデータセンター関連企業による業界団体だ。ITの社会的な役割が高まるにつれて、データセンターに集積されるコンピューティングリソースは急激に拡大を続けており、電力消費も年々増え続けている。同団体では、データセンターにおける電力利用を効率化するための評価手法を確立させ、具体的な手法のノウハウ蓄積などに取り組んでおり、日本でも2008年5月から活動を開始している。

データセンターの電力消費低減へ向けてさまざまな取り組みを展開

「応募書類に加えて、審査時の判断材料としてファクトやデータを多めに用意してもらえると熱意が伝わってきます」とグリーン・グリッドの日本技術委員会代表、田口英治氏は話す

 グリーン・グリッドの日本技術委員会代表を務める田口英治氏は「われわれは、さまざまな企業の電力消費低減ベストプラクティスを集約したり、研究機関と連携してホワイトペーパーを作成、発信したりといった活動を行っています。他の産業団体はもちろん、米国ではエネルギー省や環境庁、日本では経産省など、政府機関とも関わりを持っています」と話す。

 グリーン・グリッドの名は知らなくても、「PUE」という語を聞いたことのある人は多いはず。PUEとは「Power Usage Effectiveness」の略で、データセンター全体の消費電力と、その中のIT機器が消費する電力から求められる、データセンターの電力消費効率を示す指標だ。グリーン・グリッドが標準化・普及に取り組んでいる指標の代表格でもある。

 「こうした指標が乱立すると業界に混乱を来すため、グローバルな標準化を行うことも我々の役割となっています。PUEは、最初の頃には注釈が必要でしたが、最近はデータセンター業界では普通に通じる用語になってきたと感じます。また、PUEの他にもさまざまな指標の策定に取り組んでおり、電力の他にも冷却に使う水資源の利用効率を示す『WUE』、カーボンすなわち二酸化炭素排出量を基準とした資源効率『CUE』といった新たな指標も策定しています」(田口氏)

 PUEをはじめとする数々の指標は、新設されるデータセンターがどれだけの効率的なものとなったかを評価するだけでなく、既存データセンターがどれだけPUEを改善したか、その改善手法に対する評価にも用いられる。こうした手法をベストプラクティスとして業界で共有、活用していくことも、グリーン・グリッドの活動の一環だ。

「どれだけ改善したか、どのように改善したか」

 データセンターの効率改善を評価する活動の一つとして、毎年開催されているのが「グリーン・グリッド データセンター・アワード」。日本では3回目となるグリーン・グリッド データセンター・アワード2012の募集が5月9日に開始された。受付は9月7日まで、対象となるのは日本国内でデータセンターを運営している企業・団体で、規模や業種・業態は問わない。

 「IT機器の節電は『やって当たり前』とされがちですが、その『当たり前』を実現するために、関係者は日の当たらない努力を続けているものです。アワードを行っているのは、そうした見えない努力に光を当てようという狙いもあります」と田口氏は話す。

 「見えない努力に光を」という考えは、過去の受賞内容にも現れている。主に既存データセンターにおける改善成果を、高く評価しているのだ。新設データセンターならば、最初から効率的な設計・設備で立ち上げられるが、運用中のデータセンターを効率化することは建屋や空調設備などの都合もあって容易ではないし、運用を止めることも難しい。結果として、時間をかけて小さな改善を積み重ねていく継続的な努力が必要となるケースが多い。

 「例えば、2010年に行われた第一回アワードで最優秀賞を受賞したのは日立、優秀賞は富士通でした。日立は5年間かけて最大50%という消費電力低減目標に向けてさまざまな取り組みを行い、富士通は施設エンジニアリング部門や空調技術開発部門も含めた社内横断的な活動を展開して、それぞれ成果を挙げた事例です。これら受賞企業の担当者たちは、『受賞で努力が報われて嬉しい』と、大変喜んでくれました。受賞企業にとってもCSRの向上につながるはずです」(田口氏)

 担当者の地道な活動を評価してモチベーションを高めるだけではない。こうした既存データセンターの改善活動は、他社でも参考となるノウハウの宝庫でもあるからだ。例えば、ある事例では、データセンター内の穴開きタイルの置き場所を整理しただけで室内のエアフローが大幅に改善したという。エアフローを考えずに単に穴開きタイルを並べるなというノウハウだ。

 「評価の中には、改善手法の横展開が可能かどうかといった点も含まれます。アワードを通じ、そういったノウハウをぜひ公開してほしいと考えています。我々は、そのノウハウを全世界へ発信していきます。諸外国は日本に対し『節電の進んだ国』という印象を持っています。日本の節電ノウハウは海外からも注目されているのです」(田口氏)

「節電の日本」を世界へ発信

グリーン・グリッドの日本コミュニケーション委員会代表、坂内美子氏は「アワードでは、データセンターの規模は問いません。過去のアワードでもラック2〜3本という規模で応募してくれています」と話す

 「日本の事例を海外に紹介する取り組みは、グリーン・グリッド日本支部としても注力している部分です」と語るのは、グリーン・グリッドの日本コミュニケーション委員会代表、坂内美子氏だ。

 これまでも、グリーン・グリッド日本支部は国内企業の事例の発信を頻繁に行ってきた。会員企業数でみれば、日本を中心とする企業は全体の1割に過ぎないが、情報発信量では3〜4割にもなるという。過去のデータセンター・アワードでも外国メディアからの取材があり、日本企業の節電に対する興味が伺える。しかも今年は、昨年来の電力不安もある。

 「昨年の震災・津波と原発事故の影響で節電を余儀なくされた企業は多く、データセンターにおいても昨年から今年にかけてかなり節電の取り組みが進められたはずです。どのような取り組みがあったのか、海外からも期待されています」(坂内氏)

 もちろん、ITそのものの事情は世界共通だ。欧米に比べれば高温多湿の夏があるなど気候条件に違いはあるが、日本でのノウハウの多くは他の国でも通用する。そして注目すべき点としては、日本には中小規模のデータセンターが多いこと。クラウドの拠点となるような超大規模データセンターこそ少ないが、多くの中小企業が自前でサーバを持ち、しばしば工場やオフィスの一角にサーバ室を設置して運用している。こうした小さな規模のデータセンターのノウハウが、特に期待されるという。

 「中小規模データセンターは、世界中に数多く存在しています。効率化には規模の要素も影響するので中小規模では使えない手法もありますが、その制約の中でどのような工夫が効果的なのか、多くのユーザーが知りたいはずです。昨年までの応募にも、中小規模データセンターの事例がありましたが、今年もさらなる応募を期待しています。日本でも今後のトレンドはモジュラー方式。いろいろな場所に設置でき、小さくても効率が高いという点がポイントになります。そういう事例も出てくると嬉しいですね」(田口氏)

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提供:グリーン・グリッド
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ニュース編集部/掲載内容有効期限:2012年8月22日

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