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“非選抜”として脇を固める大切さ――楽天・杉原取締役キーマン、本を語る【自分がどうありたいかを振り返らせてくれる3冊】(2/2 ページ)

» 2012年08月16日 15時20分 公開
[取材・文/伏見学,ITmedia]
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「非選抜アイドル」

 僕はまったくAKB48に詳しくなくて、ほぼ一人として名前と顔が一致しないというほどのアイドル無関心層なのです。ですので、実は、この本は知人から「面白いから読んでみなよ」と紹介されて、だまされたつもりで読んでみるかと、しぶしぶ手に取りました。

仲谷明香著「非選抜アイドル」(小学館) 仲谷明香著「非選抜アイドル」(小学館)

 ところが、読み始めてとても驚きましたね。最初の10ページくらいで、これはきちんと読まなければいけないと強く思いました。本書では、僕自身が10代や20代に経験したさまざまなこと――成長するきっかけになったことや、目の前にたくさんの試練があってそれを越えていくときのこと――が少女の目線で自然に書きつづられていて、大変共感しました。

 目の前にあることをひたむきに、丁寧に行えば、自分の夢が近づいてくる。それが一番の近道だということが、この本で最も伝えようとすることなのですが、若くてまだ人生経験が少ない人が感じている、心情の変遷が丁寧につづられていて、懐かしい気持ちにさせてくれました。

 著者が置かれている立場は、必ずしもセンター・オブ・センターではないが、端っこの端っこでもないという、言い得て妙な感覚というのを、努力と縁と恩によって強い運をたぐり寄せている様子が描かれています。そういった運のたぐり寄せ方というのは論理的には理解されていないと思いますが、それを実体験の中から得ていくさまが書かれているのが興味深いです。

 トップ・オブ・トップのスターではなく、等身大の目線で書かれているので、読んだ人は誰もが共感できると思います。僕自身も会社の立場は、トップ・オブ・トップではないし、これまで小学校、中学、高校などいろいろな組織や集団に身を置いても、一番上であることに違和感がありました。一方で、補佐役だったり、集団を後押しする役割だったりする方が性に合っていると思いました。トップへの憧れがないわけではないが、それが自分らしくないとあえて感じるようなところにあって、本書のような生き方に共感を持ちました。

 世の中でほとんどの人が非選抜だと思いますが、自分なりの主人公観の作り方というか、置かれる組織や立場、集団においてどういう心を持つかによって、輝いたり駄目になったりするのではないでしょうか。また、そうしたポジションにあってこそ、トップの脇を固めることの素晴らしさ、大切さを感じるということもあるはずです。

 「ああ、そうだったな、こういう風に道が開けていくのだったな」と久しぶりに新鮮な気持ちを思い出すことができた一冊でした。

「へうげもの」

 日本の戦国時代の武将である古田織部を主人公に描いた作品です。彼はまさに非選抜武将だと思いますが、人間として非常に共感を持てます。せこかったり、弱かったり、意地があったり、欲があったりして、本当は駄目な人間なんだけど、時代に生かされている、人間味のある人物です。

山田芳裕著「へうげもの」(講談社) 山田芳裕著「へうげもの」(講談社)

 この本では、生きるか死ぬかという戦国時代を、古田織部が人間性を発揮しながら生き抜いていく様が描かれています。読んでいて魅力的なのは、リーダーである織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と、それに従う者との間の葛藤や心の動きが丁寧に書かれている点です。自分の生き方を照らし合わせ、思いを馳せることができる、親近感が沸く本です。

 人間は基本的に欲があります。それを我慢しないでこの時代で許される範囲の中で欲を発揮し、自分が置かれている立場をまっとうし、生かされているということを受け止めて生きていく。そういう姿勢に共感します。

 この本を知ったのは、NHKでアニメ化されていたものを偶然見たのがきっかけです。ぜひ漫画で読まねばと思い、その場でコミックを買いそろえました。

 昔から漫画はたくさん読んでいますね。漫画も愛読書のうちの1つです。子どもからも「なぜパパだけ漫画を読んでいるの?」と言われるくらいです(笑)。

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