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エンジニアライフというオープンソース的集団コミュニティー運営の要諦(2/2 ページ)

» 2012年09月28日 18時00分 公開
[聞き手:鈴木麻紀,ITmedia]
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奈良で銅鑼をたたく

 オフラインでの活動が活発なのは、エンジニアライフの大きな特徴だ。編集部主催で開催するオフ会が年に数回あるが、コラムニスト主催のオフ会や勉強会はもっと頻繁に行われている。

猫ならぬ、鹿をかぶってロクロを回す金武@世界遺産

 編集部主催のオフ会を始めたのは2年前、2010年のことだ。もともとエンジニアには勉強会を自主的に開く文化があったが、このころから勉強会ブームが加速し、コラムニストの中から自分でもやってみたいという声が上がってきた。

 勉強会での定番コンテンツはLT(ライトニングトーク)、ショートプレゼンのようなものだ。ひとり5分程度の短い発表を多数の発表者が連続して行うものだ。1時間のプレゼンでは自分にはできないかもしれないと考えるが(エンジニアは得てして謙虚だ)、5分程度で多くの人とともに行えるのならチャレンジしやすく、初心者にもハードルが低い。

 そして実際にやってみると分かるのだが、LTはプレゼンの良いトレーニングになる。5分で理解してもらえるよう構成を練り資料にまとめるには、テーマに対するそれなりの知識と人に伝えるためのテクニックやマインドが必要だ。LTをきっかけにプレゼンに興味を持ち、極めていこうとするエンジニアが最近、増えているそうだ。

 自主的にオフ会を開催するコラムニストたちに対して編集部は、悪く言えば「野放し」、良く言えば「信頼して任せている」状態だ。主役はコラムニストで、編集部はそれをサポートするというスタンス(たまに、編集部主催のオフ会もやるそうだが)。2012年春に奈良の能楽堂(世界遺産!)で行われたコラムニストが登壇したLT大会に金武は、愛用の銅鑼を持って応援に行った。

Webメディアは、現実に影響を及ぼしてナンボ

 今はエンジニア主導でオンラインもオフラインも運営しているエンジニアライフだが、スタート当初はやや異なるものだったらしい。メディアが運営するブログポータルとして、「メディアに自分の記事が載ったらうれしいだろう」という仮説がベースにあり、オフラインでの展開は想定していなかった。

 エンジニアライフが現在のような形に進化した背景には、前述の勉強会ブームから生まれたオフラインの盛り上がりに加え、金武の考え方も大きく関与している。

 金武は大学でメディア学を専攻していたが、いわゆるマスメディアは好きではないという。「われらは社会の木鐸であり、情報を民に与えているのだ」という発想が苦手で、それよりも「誰かが答えを知っている」というオープンソース的な「集合知」の考え方に共感を感じたという。

 だから就職先としても既存のメディアではなくWebメディアを希望し、アイティメディアに入社した。金武は、自分のベースは人間への信頼だという。

 金武のエンジニアライフ運営のポリシーは、「コラムニストのためになることをする」である。根幹となる方針はあるが、細かいルールは設定しない。掲載前にコラムのチェックはするものの、誤字脱字の修正程度にとどめ、内容がコラムニストや読者のためにならないと判断したときに修正の提案をする。メディアに載せるからには編集者がチェックせねば、といった上から目線で接するのではなく、あくまで「コラムを書く人たちをもっとサポートしたい」と話す。

 メディアは、そしてメディアの中の人である自分の役割は“仲介”である、と金武は考える。「どれだけPVが出たとか、どれだけブクマされたかとかは、実はあまり興味がないんです。それはあくまでメディア側から見た数値指標で、別にエンジニアたちのメリットになるわけじゃない。コラムニストや読者の現実にいい影響が出てナンボ。そこでエンジニアライフの価値が出る。だから、コラム執筆を次のステップにつなげてほしい。エンジニアライフは通過点でいいと思っています」(金武)

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