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浅倉大介、森雪之丞がVOCALOIDを語る──男声ボカロトリオ「ZOLA PROJECT」デモ曲について聞いてきた(3/3 ページ)

» 2013年06月21日 19時59分 公開
[松尾公也,ITmedia]
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photo KEIさんによるKYO (c)Yamaha Corporation

浅倉:男声の音声ライブラリもけっこう出てるんですけど、やっぱり個性がそれぞれ強くって。

──強すぎる?

浅倉:disってるわけじゃないですけど(笑) ZOLAは個性があって、すごくピュアですよね。新人で手あかがついてない男の子3人でも声がいいから。で、「これをどうしますか?」って提案があって、それをぼくらも受けて、発売されて。これを使えば全員がプロデューサーになれるというのはすごいラッキーなことだと思います。

──彼らが育っていったらまた曲を書いてみたいと思いますか?

浅倉:プロの調教師を目指してみたいですね(笑)

 人間のディレクションもうまくなるかもしれないですね(笑)

──逆もできるということですね。

浅倉:ただ、人間はビートにのったりということはできるけど、VOCALOIDにはまだそういうのはできなくって。そういうのをどうやろうかというと、そこはLogicでオートメーションしたりとか、ボリュームフェーダーかけまくって声の表情を出したりとか。けっこう大変だったけど面白かった。

──そこはLogicなんですね。

浅倉:はい。

──これからのVOCALOIDにはどんなことを期待していますか?

浅倉:VOCALOIDの音楽シーンはバーチャルな部分とリアルな部分が混在していて面白いものになっていて、型にはまらずこれから広がっていってほしいと思いますね。ぼくらの世代が想像しないようなことをみんなやってくれるからね。初音ミクが出て5年ですからね。

──育ちましたよね。

浅倉:すごい進化ですよね。ドラムマシンがでたときに、生のドラマーが「俺たちはどうなるんだ」みたいなものがレコーディング業界ではありましたけど、やっぱりそれぞれのよさがあって、それぞれが生き残っているので、VOCALOIDもVOCALOIDらしさを保って突っ走っていってほしいですね。とくにZOLAの3人には。

言葉までを遊びの道具にしてしまう

森:作詞の域から離れる話かもしれませんけど、テクニックでできあがっていた音楽が、アイデアとかセンスとか楽しみ方とかそういうもので作れるようになってきた。コンピュータミュージックが始まったときからそうなんですけど、「まさか言葉まで」とはね。

 まさに言葉までを遊びの道具にしてしまったんだから、それは人間ってすごいなって。ZOLAはもちろんすごいけど、でも人間がすごいな、ってところに結局は戻ってくるわけで。本当にZOLAは優秀だと思うけど、使っている人間がどれだけ楽しんで、イメージを広げて、夢と現実の境界線を破っていってくれるかということが、一番楽しいことだと思うので。そういうところで遊んでくれたらいいなと思っています。

浅倉:初めて雪之丞さんとコラボできたんでうれしくて。歌詞の世界がいいところを突いているんですよ。今までのボカロを愛している人たちにも通じるメッセージだし、ZOLAでボカロを知った方にもなんか、可能性を感じられるような、とても素敵な歌詞なんで、ぜひ言葉を見ながら聴いてほしいですね。

森:浅倉さんのビートがあって、シンコペーションもアンティシペーションがすごくビートを作っている、そのメロにいかにVOCALOIDの言葉を乗せるかというところで、「ZOLA君どのくらいできるかな?」っていう。

 「天使なんて言ってたって」とか、食ったところで促音とか。浅倉さんのメロがそういうものを求めていたから実験ができたことなんで、非常におもしろいセッションができたと思います。

──それに応えるだけの性能だったと。

森:もちろん。ちょっと無理かなと思ってたんですけど。

浅倉:見事に応えてくれたなと思ってたんです。けっこうハードル高くって、小さな「っ」とか、一音節の中に「ん」が入ってたりとか、どう表現されるんだろうと。

──人間なら苦労しそうなところですね。

森:今の時代でそれが歌えないと難しいだろうと思われるようなことをZOLAにも試してみたというね。

浅倉:デビュー曲にして2人でSごっこしてましたね(笑)

──いじめたけど、ちゃんと応えてくれたよと。

森:むちゃくちゃ応えてくれましたね。


 6月20日に行われたヤマハ銀座で開かれた発表会では、このデモ曲コンビと開発陣を加えたトークセッションが行われ、ZOLAで提供されるさまざまな音声、ビジュアル素材についても発表された。

 音声素材はAHSのexVOICEに似た仕組みで、VOCALOIDデータベースでは表現しづらい音声断片を「中の人」が発声したものを収録。

 ビジュアルについても、天野喜孝さんだけではなく、KEIさんなど4人の絵師が3人のビジュアルを自分流に描いたものを公式が提供しており、投稿にも使えるようになっている。

 ZOLA PROJECTはオープンプライス。VOCALOID STOREでの価格は1万2800円。ダウンロード販売は現在のところ、行われていない。

 なお、ZOLA PROJECTの今後の展開として、iVOCALOID版、英語データベースをはじめとする声色の拡充について剣持さんに聞いたところ、「未定」とのことだった。

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