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タクシー運転手に広がるTwitterやLINE 「ツイドラさん」は何をつぶやく?(2/2 ページ)

» 2013年08月09日 10時00分 公開
[本宮学,ITmedia]
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「タクシーは統計学」「パチンコにも似ている」

 タクシー会社にはそれぞれ異なる強みがある。例えば、銀座エリアはA社が強く、赤坂エリアはB社が強いといったように、細かく“棲み分け”が行われている。だが、ツイドラたちの間では所属組織は関係ない。会社や立場を超え、フラットな協力関係が生まれている。

photo 鹿内さん以外の男性ドライバー3人。それぞれ自前のスマホやタブレット端末で情報発信を行っている

 「例えば大企業がホテルなどでイベントを開くと、1つの会社のタクシーだけをたくさん呼ぶ。そんな時『うちが担当しているホテルで1000台くらいタクシーが集まってるから、おこぼれのお客さんがいるかもしれないよ』などと教えてあげる。あとは例えば『武道館で矢沢永吉やってるよ』『じゃあ行ってみようか』とか」(山内さん)

 だが、彼らはなぜ所属会社を超えて助け合うのか。「タクシーって統計学だから」と横田さんは話す。「例えば自分1人で営業していたら1人分のデータしか取れないが、Twitterなどを使ってみんなが情報を共有すれば、『誰がどこに行ってよかったらしい』といったことも分かる。数年分に相当するデータを収集できるのがTwitterの最大のメリット」

 「タクシー業務はパチンコにも似ている」と山内さん。「タクシーは実は1日に走れる距離が決まっていて、一定の距離を超えたら会社に帰らなくちゃいけない。パチンコで言えば、それが自分の持ち玉みたいなもの。だから、今日はどこのシマが流れているとか、何時ごろになるとここが当たるとか、そういう情報をみんなで報告し合う」

スマホブームでツイドラ急増 会社に“つぶされる”ケースも

 ツイドラの数は「ここ数年ですごく増えている」と鹿内さん。「特に、ガラケーからスマホに替えてLINEを始めたというドライバーがすごく増えている」と横田さんも感じている。

 彼らがSNSにアクセスするのは私物のスマートフォンやタブレット端末からだ。仕事中のSNS利用は、もちろん会社非公認。「ある時『お客さんの個人情報を書くな』と会社から注意されたこともある。個人が分かるようなことなんて、何も書いていないのに」と山内さんは不満をもらす。

 今回の取材に当たっても、顔出し・実名出しがOKだったのは鹿内さんだけ。その他の人はNGだ。「ブログやTwitterをやっていることが分かると、会社に“つぶされる”ケースもある。会社でTwitterやってるとはあまり言えない」(山内さん)

 一部のタクシー会社はIT企業などと連携し、ユーザーがモバイル端末からタクシーを呼べるサービスなどを展開している。だが、そうした企業は業界内でもほんの一握りだ。タクシー業界全体を見てもIT投資に消極的な姿勢が目立つという。

 「本当は、何時何分にどの乗務員がどこに行ってどうだったとか、会社がいろいろなデータを取っているはず。そういうデータをもとに、乗務員1人1人に合わせた情報を提供してほしいが、どこの会社もやっていない。やった者勝ちだと思うけど」(山内さん)

 「ただ、システムにお金をかけてもすぐにうまくいくとは限らないし、今のやり方でなんとかなってしまっているから、同じ状況が続いていくのだと思う」(山内さん)。こうして今日も、ツイドラが操るタクシーが街のどこかを走っていく。

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