manaveeを通じて教育の格差解消に全力投球する花房さんだが、自身は恵まれていたという。実家は神戸市内。中高一貫の私立校に通い、大学受験浪人もした。13歳から母子家庭だったが、地理的にも金銭的にも苦労した覚えはない。
ただ「恵まれて申し訳ないという気持ち、生きづらさみたいなのが個人的にはあった」という。高校時代も成績が良く、特待生として予備校の講習を無料で受けられた自分自身は、「搾取側」だったと自覚している。
教育格差を解消すべきという考えは誰から影響を受けたわけでもなく、「染みついたアイデアとしてあった」という。「教育は少なくとも機会均等じゃないとおかしいよね、と。ごく自然な気持ちとして」
manaveeは受験準備のサイトだが、大学受験は「超嫌い」だ。自分が現役受験生だったころ、絶対受かると思っていたのに落ちたのが今もトラウマ。センター試験の現代文の「作者の気持ちを選びなさい」という設問は、意味不明でばかばかしいと思う。
就職活動も恐怖だ。「いい時代を生きた人事担当者に頭を下げるのとか嫌」だし、面接で落ちたとして、受験者には理由が分からず理不尽だ。
「モヤモヤしていた」――3年前に突然、manaveeを作り始めた当時をこう振り返る。受験が嫌いすぎて、迫り来る就活が嫌すぎた。そのモヤモヤが、manaveeを作るパワーになったという。「意味の分からないリスクテイクですよ(笑)」
理不尽な社会の基準に合わせるぐらいなら、基準そのものを変えてしまいたいと思うタイプだ。「受験も就活も、押しつけられる社会構造が嫌なんです。僕が価値を作るとか、前提から穴を掘り返すのはいいが、向こうの基準に合わせてそこに当て込むのは嫌」
19歳で東大生になり、2年生までは順調に学業をこなしてきた花房さん。manavee立ち上げてから、“普通の東大生”のレールからそれた。2年間休学し、今も大学には行っていない。manaveeが落ち着けば、新しいことにチャレンジしたいと考えている。
「大学は辞めるかもしれない」という。中退すると母は悲しむだろう。母の顔を思い浮かべると、申し訳ないと思う。でも、「置きにいったらあかんと思うんです」。
なぜ大学に行くのか。なぜ卒業するのか。なぜ就活するのか。「念のため」とか「みんながそうするから」と“置きに行く”のではなく、自分自身の気持ちに正直に向き合い、本当にやりたいことを選びたいという。
「保険を取りながらだと、ブレーキ踏みながらアクセル踏むみたいな感じになる。それをしたらあかんな、絶対エンストするやろな、絶対進まんのやろなと思うんです」
小さいころから音楽が好きで、ずっとピアノを弾きたかったが、弾けずに終わってしまった。「それはすごく良くないと思ってて。やりたいことにちゃんと向き合って、自分に正直に生きたい」
花房さんは、自身の視点でmanaveeのこれまでの歩みをまとめた本「予備校なんてぶっ潰そうぜ!」を執筆中。集英社から来年春ごろ発売予定だ。
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