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「照明業界のApple」に――名古屋発“ダサくないLED電球”「Siphon」が目指すもの新連載・クラウドファンディング「成立」のその後(2/3 ページ)

» 2014年11月21日 09時00分 公開
[坊垣佳奈(Makuake),ITmedia]

「資金調達だけではない」 クラウドファンディングに挑んだ理由

 とはいえ、大手メーカーも目を付けていなかった「おしゃれなLEDライト市場」を開拓するにはさまざまなリスクがある。そこで、想定されるリスクをできるだけ軽減するために同社が選んだ方法が、クラウドファンディングサービスを活用することだった。

 戸谷さんによれば、Siphonの商品化に向けてクラウドファンディングを利用しようと思った理由は大きく3つ。1つ目は「在庫リスクの軽減」だ。

photo Siphonのプロジェクトページ

 「新しいプロダクトを生み出すためには数百万円の初期投資が必要なため、もし売れなかった場合を考えると、在庫だけが残るリスクが非常に高い」(戸谷さん)。その点クラウドファンディングを利用すれば、プロジェクトの支援額/支援個数に合わせた生産体制を用意でき、在庫を抱えるリスクを回避できると考えたのだ。

 もう1つの理由は「マーケティング」だ。クラウドファンディングなら、実際に販売する前に「3つのモデルの中でどれが最も売れるか」「どんな人が買ってくれそうか」といった声を実際の想定ユーザーから聞くことができる。戸谷さんは「当初はカフェなど店舗経営者からの購入を想定していたが、個人ユーザーからの購入希望も多くて驚いた」という。

 そして3つ目の理由は「プロモーション効果」が見込めることだ。資金調達の段階で商品が話題になれば、発売前からたくさんの商品のファンを獲得することができる。さらに、販売時の流通ルートを事前に確保できることなども見込んでいたという。

いざプロジェクトスタート 目標額の早期達成で社内に変化も

 社内では、そもそも照明器具部門自体が新しい事業部だったこともあり、クラウドファンディング開始前には「このプロジェクトは大丈夫なのか? うまくいくのか?」と社員の多くから不安視されていたと戸谷さんは振り返る。

 しかし、いざスタートしてみるとプロジェクトは大成功。開始から6日で目標額の150万円を突破し、それから約2週間で500万円を突破。現在では960人以上のユーザーから950万円以上の支援を集めている(2014年11月19日時点)。

 目標額をはるかに超えた資金をもとに、同社はすでにSiphonの生産計画を見直し始めているという。「支援していただいた方々の期待に応えるため、責任をもってできる限り最高の製品を届けたい」(戸谷さん)。今後は集まった資金の一部を生産体制の強化費用(生産ラインの確保/増員、材料/部品の確保、検査設備の増設など)にあてていく考えだ。

 さらに、支援者からは「こういうサイズがほしい」「もっと明るいものはないのか」といった新製品のヒントになるような声がたくさん届いているという。社内ではそうしたリクエストをもとに新製品に関する議論が始まっているほか、新製品の開発にも今回のプロジェクトで集めた資金を使う予定だ。

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