記者も同店で「単位パン」を購入し、実際に食べてみた。108円(税込)と「人間の煩悩の数と同じ」(法政大生協のPOPより)お手ごろな価格。「パンがぱさぱさしている」という前評判を聞いていたため、正直なところ味にはあまり期待していなかったのだが、これがなかなかおいしかった。
袋を空けた瞬間ただようパンのいい香りに食欲をそそられ、口に入れると、水分の少ないパンと、とろっとしたクリームがマッチする。クリームはバニラの香りで甘すぎず、しっかりとした生地は手で持って食べやすく、試験勉強のお供に良さそうだ。クリームは均等に入っており、頭からしっぽまでしっかりあんこが詰まった鯛焼きを食べたときのような満足感が得られた。
白石さんは、東京農工大学生協職員だった2005年当時、学生などが生協への要望を書き入れるアンケート用紙「ひとことカード」に寄せられた質問にウィットに富んだ返答を返し、それがブログにまとめられてネットユーザーの間で話題に。白石さんの返答をまとめた書籍「生協の白石さん」は93万部を発行するベストセラーとなった。
法政大生協小金井店の店長には2013年7月に就任。多忙な店長職をこなしながら、時々「ひとことカード」に回答している。「入荷リクエストの回答などは、スタッフのほうが詳しいので任せていますが、たまに来るそれ以外のカードは私に回ってくれば回答しています。農工大のころとは違いますね。当時は注目されている前提で書いていましたが、今はそういう感じではなく、私のことを知らない人も多いので。それぐらいがちょうどいいですね」
同店の「ひとことカード」コーナーには、「単位売ってください」という質問も張り出されていた。昨年7月のもので、白石さんはこう答えている。
「ご要望ありがとうございます。仮にリクエスト通り、当店が単位を販売したら、
このようによこしまな売買がそのまま、お別れの売買となってしまいます。そんなのは嫌だ。お互いもうしばらく、大学に居続けましょう」
――後に「単位パン」が開発され、大学に追い出されずに生協で単位が販売できるようになるとは、当時の白石さんはまだ、想像していなかったようだ。
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