ITmedia NEWS > STUDIO >

「予算ゼロで有名になりたい」 無料で使える脱サラ双子姉妹“フリー素材アイドル”が生まれるまで(2/3 ページ)

» 2015年07月10日 11時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]

 「一切予算はないけど、なんとかこの子たちを有名にできる方法、ないかな?」――所属事務所スタッフ・アップの戸張立美社長が旧知の広告代理店社員に冗談半分で持ちかけたのが“フリー素材アイドル”誕生につながった。事務所からの持ち出しは、これまで0円だ。

photo 「人形っぽい」と“フリー素材化”のきっかけになった2ndシングル「トトト」のジャケット

 双子だからこそのそっくりな見た目、脱サラというキャッチーな経歴、現在進行形で活動しているアイドル。1つ1つの魅力を生かせる施策を企画会議で考えた。「自らフリー素材になる」というアイデアは「くまモン」「ブラックジャックによろしく」など、著作権をほぼフリーにしたことで2次利用や目に触れるチャンスが増えたコンテンツを参考に生まれた。「双子が並んでると人形っぽくて面白いんじゃない?」――“駆け出しアイドル”に失うものはない。1番どうなるか分からないが、1番何かが起こりそうでもあるこの企画に決まった。

 「最初は『えっ本気ですか?』って思いました。不安でしたね。いかがわしいものに使われちゃうんじゃないかって」(MIKAさん)「でも私たちの双子という特性も生かせるし、具体的になればなるほど面白いかも! とわくわくしてきました」(RIKAさん)

 本来であればタレントの価値であり商品とすべき部分を無料で提供しているとも言え、事務所としてもチャレンジングな案だった。「『この人たち、見たことある』と思ってもらうための最初のステップ。心配なことはないわけではなかったが、まぁそういうことは有名になってから考えればいい」(戸張社長)。

 「本当に予算がなかった」ので撮影費用はクラウドファンディングで30万円を集めた。当初はこれほど大規模にするつもりではなかったが、商用ストックフォトサービスを運営するアマナイメージズの協力を得たことで、プロのカメラマンとともに複数のスタジオやロケ地を巡って2日間に渡って撮影した。最終的に1000枚を超える素材が公開されているが、当然、通常この価格でできる量ではないという。「あれよあれよと言うまに協力してくださる人が増えていきました。面白いことをやろうとすると、人は集まってくれるんですね」(RIKAさん)

photo ビジネスシーン、家でくつろぐ様子、手足や唇などパーツのみ……などさまざまなパターンを撮影。手書きの文字や音声も
photo 2人のお気に入りは屋外で撮影したシリーズ

 プロ仕様の撮影で質、量ともに予想を上回る素材をたくさん作ることができたものの、自分たちは無名のアイドル。使ってもらえるのだろうか、「誰? 知らない」と言われて終わりではないだろうか、そもそも話題になるんだろうか……。彼女たちのその心配は杞憂に終わった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.