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オンライン学習こそ重要なのは“リアル” いつでもどこでもスマホで学べる世界の先に――「gacco」「schoo」それぞれの戦略(3/5 ページ)

» 2015年08月06日 13時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]

森:そうですね、オンラインかどうかに関わらず、教育サービスの本質的なネックだと思います。

 僕がこの事業を始めたきっかけは、前職で新卒2年目に社内で受けたeラーニングがつまらなくて「これは、全然ダメだな」と思ったことなんですよね。スライドとセミナーが一緒になったものを映像にしても、本当は現地で見聞きするものをインターネット「でも」見られるようにしているだけ。インターネット「だから」できる学習体験を突き詰めていけば面白く見られるはずだし、このマーケットにチャンスはあるぞ、と思ったんです。

――schooの講義では具体的にどんな工夫を?

森:まずは生放送であることです。目の前で進んでいくリアルタイム性はシンプルですが大きいと思います。それから、他の受講者の存在を感じるチャットやコメント機能。先生も常に見ていますし、参加意識を高めやすいですね。

photo 録画視聴でも生放送時のコメントが流れる。質問を先生が拾うことも

 寄せられたコメントや質問の中からユーザー間で関心が高いものを投票で決める仕組みも上手く機能しています。講師がニーズの多い質問を拾い上げていくことで学習効果自体を高めることにつながります。大きな教室での質疑応答でピントのずれた質問が出て、その場にいる人全員の時間を奪ってるシーン、みなさんも絶対に遭遇したことありますよね(笑)。

 それからこれは運営側の話になってしまいますが、ユーザーが離脱したポイントやコメントしたタイミングなどをデータとして取得し、授業の制作に役立てています。コンテンツとして面白いもの、見ていて興味を持ち続けられるものを作るノウハウはこれからも磨いていきたい部分です。

――その点、gaccoの講義は録画配信ですね。

伊能:最も強く意識しているのは「オンラインだけでは続かない」ということ。gaccoでは、企画当初からネットとリアルのハイブリッドを作ることを意識し、オンライン講座の内容を元に、講師の指導のもと、受講生同士がディスカッションやグループワークを行う有料の「反転学習コース」を積極的に取り入れています。

photo 反転授業の様子

 昨年4月に初めて反転授業を実施した「日本中世の自由と平等」(東京大学・本郷和人教授)では、女子中学生から80代の男性まで約90人が集まりました。グループワークは世代を混ぜたものの、それぞれの年長の人が中心になるのかな? と思っていたのですが、リーダーとして、プレゼンターとして、高校生もどんどん先頭に立っていました。同じ教材を学んできているので前提を共有していますし、それぞれ自分なりの視点や意見を持っているんですね。ディスカッションも活発に行われていて「これからこういう場面がもっと増えればいいな」と強く感じました。例えば、会社の会議では、こうはなりにくいですよね。

森:実際にコミュニケーションがとれている実感は大きいですよね。

 スクーはリアルの場作りをこちらから仕掛けてたわけではないですが、授業のパブリックビューイングやワークショップをしたいという要望がユーザーから自発的に上がってきました。今は積極的に活動しているユーザーを「学級委員」として認定し、どんな風に活用しているのかを見学に行くなどしています。

photo 全国の「学級委員」が主催する勉強会の告知を公式サイトでも行っている

伊能:やっぱりリアルなんですよね。オンラインでもオフラインでも、仲間が見えると続きやすい。

 よくgaccoについて「講義の配信サービスですよね」と言われるのですが、私は「違います、コミュニティービルディングサービスです」と答えています。普段生活していると。学校や会社、年齢、性別で所属するコミュニティがー大体固定されてしまいがち。好きなもの、学びたいことが共通の“同好の士”と普段の生活圏を超えてコミュニケーションするチャンスを作る場所だと思っています。

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