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世界遺産への落書きし放題アプリ登場

» 2016年05月16日 07時21分 公開
[大村奈都ITmedia]

 悠久の時を超えてたたずむ、文化遺産や自然遺産。そこに自分の名前を残せば、同じように時を超えてくれるのではないか――と考える人は多いようだ。この問題の画期的な解決方法を、AFPBBが報じている

 イタリアのトスカーナ州フィレンツェにあるサンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂は、三色の大理石で建造された美しい外観を持つジョットの鐘楼を擁し、一帯は国連教育科学文化機関(UNESCO)の世界文化遺産に指定されている。しかしご多分に漏れず、この大聖堂と鐘楼は14世紀以来、心ない観光客の落書きに悩まされてきた。

photo サンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂のジョットの鐘楼(Wikipediaより)

 同市の歴史的建造物保存を目的とするNPOであるオペラ・ディ・サンタマリア・デル・フィオーレは最近、大聖堂の壁を史上初めて大規模に清掃した。フェルトペンや絵の具による落書きはなんとか消したが、彫り込まれたものは取り返しがつかず、なんとか見た目をごまかすぐらいしかできなかった。今回の清掃は終わったが、放置しておけばまた落書きで壁面が汚されてしまう。そこで同NPOは、タブレット端末3台を鐘楼に設置した。このタブレットにインストールされた専用アプリ「autography」には、見学者が自由に落書きできる。下地は木か大理石か、画材はフェルトペンか絵筆かスプレーか、といった選択もできる。落書きの結果は、専用のウェブサイトに保存されている。

photo autographyのウェブサイト

 そして重要なのは、このデータは(プロジェクトが続くかぎり)何世紀でも、建物とともに保存されるということだ。「自分の名前を永久に残したい」という欲求は、充たされることになる。autographyの公開はこの3月に始まったばかりだが、最初の1週間で700点以上の「サイン」が集まったという。同NPOでは、autographyを他の世界遺産などにも普及させたいとしている。

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