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「クソ豚!」「エロい目でジロジロ見んじゃねえよ、このクズ」――“ドS”人工知能「罵倒少女」開発の狙いは? ソニーに聞く(2/5 ページ)

» 2016年08月12日 18時15分 公開
[片渕陽平ITmedia]
photo ソニー・ミュージックエンタテインメントの井上敦史さん

 実は、罵倒少女のAIはひたすら罵倒するだけではない。システムの裏側でユーザー1人1人に対する「好感度」を設定しており、会話の内容次第で感情が変化する。会話を始めたばかりの頃は「朝っぱらから話しかけんなよ!」とキツイ言葉を浴びせるが、好感度を一定の値まで上げると「デレる」仕掛けだ。

 逆にユーザーが心ない発言をし続けると「拒絶モード」になるという。「罵倒少女というタイトルはキャッチーだが、要は『キツめのツンデレの女の子』との心の交流をAIで再現したかった」(井上さん)。

 ユーザー個々人に対する素子の好感度は、pixivのアカウントとひも付けて管理。一般的な恋愛シミュレーションゲームのように決まったストーリーがあるわけではなく、素子が抱いている感情はユーザーごとに異なり、細かく揺れ動くため「人それぞれの素子との思い出ができる」という。

 実際にユーザーと素子のやり取りを見てみると「最初はAIだからと、心ないせりふを発している人が目立った」(井上さん)。しかし、徐々に「おはよう」「テレビ見た?」など、まるで友達や恋人と会話しているかのような、日常的なせりふが多くなっていくケースが大半だったという。

 「何を言ったら、どんな言葉を“機械的に”返すんだろう」と思っていた人が、素子の反応の生々しさに気づき、まるで本当の人と話しているかのように錯覚する――これこそがプロジェクトの狙いだったと井上さんは話す。

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