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オフラインで使える音声翻訳デバイス「ili」(イリー)日本上陸(2/2 ページ)

» 2017年01月31日 19時15分 公開
[山口恵祐ITmedia]
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 「相手に聞こえないと言われて、音量ボタン連打して……そういった煩わしさをとにかく取り除きたかった。『(翻訳結果が)聞こえない』と言われたら、iliを相手に近づけてリピートボタンを押す。分かりやすい使い方だ」

 実際にiliを使ったデモでは、日本語の音声入力に対して、およそ1秒以下で英語の音声が再生された。スマートデバイスの翻訳アプリのように通信によるタイムラグがないため、スムーズの会話が行えそうだ。ボイスは女性の声で再生された。

吉田CEOによる「ili」の寸劇デモ

ターゲットは「旅行」

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 開発元のログバーは、家電製品やスマートデバイスをジェスチャーで操作できる指輪型デバイス「Ring」を手掛けたベンチャー企業。iliは“万能な翻訳デバイス”ではなく、ショッピングや食事、トラブル、移動などの旅行シーンに特化して開発したという。吉田CEOは、自身の経験が開発のきっかけとして生かされていると話す。

 「海外旅行が楽しいと感じたのは、外国語が少しでも話せるようになったころから。iliは『勉強したくない』『すぐに旅行で実用できる』『インターネット接続なし』という3つの特徴を持った製品を目指して開発した」

 例えば、「高いです」とiliに音声入力すると、「(価格が)高いです」(It is expnsive.)というように旅行シーンで使われるワードを優先して出力する。こういった工夫によって翻訳スピードを上げているという。

 言語の収録フレーズや、ili本体の詳細スペックは非公開としながらも、音声入力とテキスト変換を同時に行える高性能プロセッサを搭載しているという。音声入力から結果が出力されるまで、最速0.2秒の高速レスポンスが可能だとしている。

法人向けに展開する理由とは

 iliの一般向け発売は2017年度中を計画しており、まずは先行して旅行代理店やホテルなどの法人向けにレンタルサービスを提供する計画だ。法人向けを先に展開する理由として、吉田CEOは「使いやすい環境作り」を挙げる。

 「現時点では日本と米国、中国でビジネス展開を進めている。まずはユーザーが旅行先でiliを使うことに慣れてもらって、利用のハードルを下げていきたい。一般向けはそれから」

 iliをユーザーに提供する事業者向けには、使用地域に合った固有名詞を収録するといった内蔵辞書カスタマイズサービスを提供。このほか、ユーザーが多く翻訳した言葉を分析できる機能なども提供するという。

 「例えばホテルでトイレの場所を尋ねる翻訳内容が多かった場合、トイレの案内が分かりにくいのかもしれない――といった分析が可能になる」

 2016年からハワイのホテルや店舗で実施している実証実験では、従業員と旅行者の両方から高評価を得ているという。さらに今年6月からは、海外旅行向けWi-Fiルータレンタル事業を展開するビジョン(東京都新宿区)が日本全国13カ所の空港でiliのレンタルサービスを始めるほか、イオンモール(AEON MALL)や東京地下鉄(東京メトロ)での導入も決まっているという。

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photo 「ili」はハワイ州観光局の公認商品にも選ばれている。現地のお店などでは観光客向けに活用が進んでいるという

 「iliの知名度が上がることで、翻訳デバイス全体を利用する心理的ハードルが下がれば理想。そういった環境やハードウェアが整えば、1つのデバイスで双方向の翻訳機能を付けることも考えられる。2〜3年後には海外旅行者全員にiliを持ってほしい」(吉田CEO)

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