ITmedia NEWS > 速報 >
ニュース
2017年03月30日 16時57分 UPDATE

米下院が個人情報保護規制の撤廃案を可決 大統領の署名待ちへ

オバマ前大統領時代の規制を無効化する動き、再び。

[AP通信]

 米議会は3月28日、オンラインの個人情報保護をめぐる規制の撤廃案を可決し、ドナルド・トランプ大統領に送付した。これで、ComcastやAT&T、Verizonといったインターネットサービスプロバイダーは顧客の閲覧行動に関する情報を第三者に販売できるようになるかもしれない。

 米連邦通信委員会(FCC)が2016年10月に策定した規制は、インターネットサービスプロバイダーによる個人情報の扱いについて、利用者本人がもっと自分で管理できるようにすることを目指したものだ。だが批判的な向きからは、「この規制はイノベーションを妨げ、インターネット関連企業を勝者と敗者に分けることにつながる」との指摘が上がっていた。

 下院は賛成215、反対205でこの規制の撤廃案を可決。上院は既に通過している。

photo (AP Photo/J. Scott Applewhite)

 この撤廃案は、バラク・オバマ前大統領の民主党政権が最後の数カ月間に制定した一連の規制の無効化を目指す、共和党による広範な取り組みの一環だ。ただし今回の票決では、このプライバシー規制の継続を求めて民主党に賛成する共和党議員が15人いたため、僅差での可決となった。

 「共和党は米国民のプライバシーをめぐる懸念よりも利益を優先した」。民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務(カリフォルニア州)はそう指摘する。

 「米国民の圧倒的多数は、こうした個人情報の販売を認める共和党の考えには賛成していない。そうしたデータを本人の許可なく販売すべきでないことは明らかだ。ブロードバンドプロバイダーは私たちやその家族について非常に詳しい個人情報を知っている」と同議員は懸念を口にした。

 Googleなどのインターネット企業は、利用者の同意を得なくても、ユーザーがアクセスするサイトを追跡できる。共和党と業界団体はこの差について、「不公平であり、消費者にとっても分かりにくい」と激しく非難していた。

 だが「インターネット接続を提供する業者のほうが、ユーザーの個人情報をより詳しく知ることができる」と、このプライバシー規制の支持者らは主張する。ユーザーがアクセスするWebサイトやメールをやり取りする相手などの情報は、とりわけ広告主やマーケティング担当者にとっては有益だ。

 FCCの規制を撤廃することで、オンラインデータの取り扱いはあいまいな状態に置かれることになる。専門家によれば、この規制が撤廃されても、ブロードバンドプロバイダーは依然として連邦法によって顧客情報の保護を義務付けられるが、具体的に何をどうすべきかについては明確ではない。その点を明確にしようとしたのが、FCCの規制だった。

 トランプ大統領が任命したFCCのアジット・パイ新委員長はオンラインプライバシー規制に批判的であり、以前からこの規制を撤廃したい意向を示していた。パイ委員長をはじめとする共和党議員は、AT&TなどのブロードバンドプロバイダーとGoogleなどのインターネット企業のどちらに対しても、FCCではなく連邦取引委員会(FTC)がプライバシーをめぐる規制を実施すべきとの考えだ。「消費者のプライバシーについては、私たちも民主党と全く同様に大事に思っている」と共和党議員らは語る。

 共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務(カリフォルニア州)は、「インターネットの登場以来、米国のオンラインプライバシーの問題を監督してきたのはFTCであり、FCCが策定した規制はFTCからその役割を奪うものだ」と指摘する。

 「インターネットがここまで素晴らしいツールになったのは、あまり厳しく規制してこなかったからこそだ。それを今ここで止めるべきではない」と同議員。

 一方、共和党のケビン・ユッダー下院議員(カンザス州)は今回の採決で共和党と袂を分かち、撤廃案に反対票を投じた。同議員によれば、オンラインプライバシー保護規制はインターネットユーザーが今後も個人情報を確実に自分で管理できるようにするための「常識的な措置」だという。

 「私たちは、政府が私たちの同意なしに私たちの個人情報にアクセスすることを望まない。民間企業に対しても同じだ」と同議員は語る。

 ブロードバンドプロバイダーは現在FTCの管轄下にはない。従来オンラインプライバシーの問題を監督しているのはFTCだが、プライバシー擁護派はFTCの権限がFCCと比べて弱いことを問題視している。

 米国自由人権協会(ACLU)はトランプ大統領のポピュリストの側面に訴え、この撤廃案を拒否するよう促している。

 「トランプ大統領にとって、これはチャンスだ。この決定を拒否すれば、自分が企業のCEOのための大統領ではなく、全ての米国民のための大統領であることを示すことができる」とACLUのニーマ・シン・グリアーニ氏は語る。

 共和党はこれまで再三にわたり、このプライバシー規制がもたらすメリットに疑義を唱えてきた。共和党はこの2カ月間、「政府の行き過ぎを抑制する」との名目で、オバマ前大統領時代に制定された十数の規制の廃止を決めている。こうした取り組みへの批判は28日、とりわけ厳しいものとなった。

 「この規制撤廃案に賛成票を投じた議員たちは、米国民を特定の利益団体に売り渡したことになる」と民主党のジャリッド・ポリス下院議員(コロラド州)は批判する。

Copyright 2017 The Associated Press. All rights reserved. This material may not be published, broadcast, rewritten or redistributed.