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近未来SFマンガ「AIの遺電子」出張掲載 第19話「エモーショナルマシン」よりぬきAIの遺電子さん(3/3 ページ)

» 2017年06月15日 07時00分 公開
[松尾公也ITmedia]
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各話解説

 AIが人類の知性を超える特異点、シンギュラリティーを通過し、その結果として生み出されたヒューマノイドは、人間と同等の知性を備えるが苦悩も背負う。そんな時代にヒューマノイドを専門に治療する「新医師」の活躍を描くクロニクルの2巻目19話。

 AIによる小説執筆といえば、2012年にコンピュータで星新一っぽいショートショートを生成させるというプロジェクトがあり、一定の評価を得ている。

 また、「小説の大部分をAIに書かせている」という芝村裕吏さんの存在も印象的だ(参考記事:「小説の大部分はAIに書かせてます」――AI時代のストーリー創作術を、『428』イシイジロウ×『刀剣乱舞-ONLINE-』芝村裕吏が語り合った!)。

 AIの遺電子時代の作家は、職業AIによる支援を得て創作活動を行うのが普通のようで、彼女もAIに「このシーンがなぁ」とあいまいな指示を出しながら「執筆」している。

 オープンスペースにたくさんの作家が並び、スクリーンを出しながら(仮想画面だけど)作業をしている姿は、むしろITmedia NEWS編集部に近い。創作スタイルは、ぼくらが他の記者の原稿チェックをしてるときと似ている。一字一句直すよりも、こういう指示の方が楽なのは確かだ。

 日本経済新聞社が決算短信をAI執筆に移行するなど、全面的にAIになって記者が不要となる可能性もあるが、AIとヒトが「コライティング」(共同制作)をしていく未来がここでは描かれている。

 表題はおそらく、2016年に死去したAIの研究者、マーヴィン・ミンスキー博士の著書「The Emotion Machine」から。AIと創造性の関係について、ミンスキーが1982年に書いた「なぜコンピュータにはできない、と人は考えるのか」を読んでおきたい。

 今回の患者は作家の黒川彩佳さん。美人のヒューマノイドだ。美人女性作家ならば、優雅な生活を送っているに違いないと想像してしまう。

 しかし、この時代の作家は出社して、そこに備えられたAIとの対話でストーリーを練る。社内コミュニケーションスキルも必要とされるのだ。

 彼女は自分の容姿が不満で整形をし、そのせいか性格もちょっとこじらせ気味。前の会社も人間関係がうまくいかなかったせいで辞めたらしい。そこで、新医師・須堂の裏の顔である「モッガディート」に相談する。そこで彼がとったやり方とは。

 ここで思い出すのが、東京大学 暦本研究室の「表情フィードバック仮説」。笑顔でないと開かない冷蔵庫、笑わないと入れない会議室など、強制的に笑顔を作ることでコミュニケーションを円滑にしていくというものだ。

 美人の顔も手に入れた。笑顔も、かわいらしい声も。でも、性格は……。それでも、彼女の細かい変化に気付く男性がそばにいるから、多分うまくいく。

山田胡瓜先生への一問一答

―― 自分がもう一人いたとしたら、どのように漫画制作の作業を分担しますか?

胡瓜先生 共同作業はストレスになりそうなので、今週は自分、来週はお前、みたいなかたちで一週休みを作りながら交互にやります。



作者プロフィール

山田胡瓜(やまだ・きゅうり)

漫画家。2012年、「勉強ロック」でアフタヌーン四季大賞受賞。元ITmedia記者としての経験を基に、テクノロジーによって揺れ動く人間の心の機微を描いた「バイナリ畑でつかまえて」をITmedia PC USERにて連載中。Kindle版はAmazonコンピュータ・ITランキングで1位を獲得した。2015年11月、週刊少年チャンピオンにて初の長編作品となる「AIの遺電子」を連載開始。


(C)山田胡瓜(週刊少年チャンピオン)



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