先進的な取り組みで日本チームを支えてきた渡辺さん。だが「テクノロジーへの過信は禁物」と、あくまで冷静だ。
「テクノロジーがもたらす力は大きい。最初のうちは、驚きや目新しさで選手、コーチ、監督の誰もが興味関心を持つが、実用性がないと意味がない。そのテクノロジーがどう役立つのか。技術をスポーツに落とし込むのがアナリストの役目」
そんな渡辺さんがいま注目する技術は、AI(人工知能)とVR(仮想現実)だ。
16年のリオ五輪までは、試合中の情報をアナリストがシステムに手入力して機械学習させ、相手セッターの行動を予測していた。今後はAIの自動画像認識機能に期待しているという。トラッキング技術を用いて選手のプレーを自動入力できれば、アナリストはもっと分析に時間を割けるようになる。
同種のシステムとして、サッカーやラグビーでは実際にトラッキングシステムが活用されている。だがバレーボールやバスケットボールなど「高さの情報が重要な競技での応用はまだまだ」。AIに向けられる期待は大きい。
VRに期待するのは、イメージトレーニングでの活躍だ。普段練習では体感できない高さやスピードは、試合という限られた本番の機会で経験するしかない。VRや自由視点映像の活用によって、コートにいる選手の目線で相手チームの動きを見られれば、相手選手の動きやサーブの回転をどこでもイメージできるようになる。
例えばプロ野球では、16年にNTTデータがVRヘッドマウントディスプレイを使ったトレーニングシステムを開発。投手が投げるボールを打者視点で仮想体験できるもので、東北楽天ゴールデンイーグルスが17年から本格利用している。
「コート上での練習は疲労が蓄積してコンディションへの影響を及ぼすリスクがあるが、場所を選ばずにリアルなイメージができるVRは、非常に大きな期待を寄せている」と渡辺さんは話す。
日本女子バレーチームはいま、東京五輪に向け、ビッグデータを一元管理するプラットフォームを新たに作っているという。「これまで蓄積してきた実際のプレーの結果や記録だけでなく、疲労度や睡眠時間などコンディショニングデータも蓄積できれば、10年、20年というスパンで傷害予防などにも使える可能性がある。これは大きな財産で、中長期的な活用を見込んでいる」
あと3年でどう変わるか──2020年に向け、日本女子バレーは進化を続ける。
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