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クルマ1台のモデリングに6カ月 サーキット風景も徹底再現する「グランツーリスモ」の“やりすぎる”こだわり 山内社長に聞くクルマの未来はIoT(3/4 ページ)

» 2017年07月31日 13時20分 公開
[山口恵祐ITmedia]
photo ポリフォニー・デジタルの山内一典社長

 「“見えるときもある”というのがポイントです。観覧車は遠くにあるので、ボルトは見えそうもない。しかし、そういったもので生まれる表面の凹凸は、最終的に法線マップ(ノーマルマップ)という立体情報を持ったテクスチャに変換される。それに太陽の光が当たったとき、ボルトの頭に光が反射する瞬間がある。そういったリアルなテクスチャを作るためには、まず正確な立体モデルが必要です」(山内社長)

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自動運転の波をどう捉えるか、「業務用グランツーリスモ」構想も飛び出す

 自動車業界はシステムがクルマを運転する「自動運転」が大きなトピックになっている。AI(人工知能)技術や画像認識技術もあわせて国内外で競うように開発が行われているが、“走る喜び”を体現してきたドライビングシミュレーターの生みの親は、この流れに何を思うのだろうか。

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 「いろいろな見方があるが、僕はフェラーリにこそ自動運転が欲しいと思っている。スポーツカーはどうしても普段乗りの快適性が落ちてしまうので、ワインディングロードやサーキットまでは自動で行ってほしいなと思う」(山内社長)

 そんな話を聞いていると、思わぬ言葉が飛び出してきた。なんと自動運転の開発を行う企業が、シミュレーションにグランツーリスモを使っているという。市販されているゲームタイトルのため、開発用の機能が備わっているわけではない。画面に表示されている速度表示を画像認識で取得して車速を取るなど、さまざまな工夫をして実際に活用しているのだという。

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 「自動運転は1回事故が起きてしまったらおしまいなので、基本的にシミュレーションベースで実験している。NVIDIAなどが自動運転の開発にグランツーリスモを使っているようです」(山内社長)

 自動運転開発だけでなく、グランツーリスモの圧倒的なグラフィックス表現を活用してクルマのカタログ写真撮影に利用したい──といった問い合わせも少なくないという。これを受け、山内社長はグランツーリスモ SPORTをリリースした暁には、企業が研究開発などに使える「業務用グランツーリスモ」の開発を検討していると話す。

photo 空間情報を持つ現実世界の写真に、自由にクルマを配置して写真を撮れる「スケープス」モード
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photo 現実世界の写真にゲーム中のクルマを重ねているシーン。違和感が少ない
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 「グランツーリスモというタイトルは“常にやりすぎる”ことで全世界の人に楽しんだり、驚いてもらえたりしている。手を抜けないということもあり、一体どこまでいけるのか、常に限界へ挑戦しています」(山内社長)

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