あらかじめ、バッキングはGarageBandで作っておく。このテンポとキーに合わせてMobile VOCALOID Editor上の初音ミクの歌唱データを作り、それをもう一度GarageBandに取り込んで合わせる、という流れになる。
GarageBandとMobile VOCALOID Editorは使っているファイルフォーマットが違っていて、その保存場所も異なり、相互に参照することができない。共通の置き場がないのだ。そこである種の工夫をしなければならない。
テンポとキーだけを手がかりに、バッキングのガイドなしにMobile VOCALOID Editorで初音ミクのボーカルを作って、何小節かできたらGarageBandにコピペするという簡単なやり方もある。
それにはAudioCopy/AudioPasteと呼ばれる仕組みを用いる。
これはPCやiOSで使われているコピー&ペーストをオーディオに発展させた、サードパーティーによる仕組みで、GarageBandはペーストされることだけできる。Mobile VOCALOID Editorで作ったボーカルのオーディオデータをAudioCopyし、その後でGarageBandに切り替え、オーディオトラックにAudioPasteする。
まず、初音ミクを買わなければならない。Mobile VOCALOID Editorの初期画面にはサンプル曲や作成した曲のリストがあり、その左下にショッピングカートのアイコンがある。これが、歌声ライブラリを購入できるストアだ。初音ミク以外の30種類の歌声ライブラリもここから購入できる。標準で付属するVY1_lite以外のほとんどが2400円、VY1_liteのフルセットであるVY1だけは1200円だ。
Touch IDを使って購入した後は、自由にそのライブラリを使うことができる。ここで初音ミクのライブラリを購入する。さっそくゲットして1曲作ってみよう。
Mobile VOCALOID Editorで初音ミクの歌声ライブラリを購入すると、サンプル曲「エレクトロサチュレイタ」が1つ追加される。このVOCALOIDトラックを細かく見ていくと、いろんなテクニックがわかるので、ぜひチェックしておきたい。
Mobile VOCALOID Editorでは、ピアノロールと呼ばれる編集画面でどこかをタップすると、そこにノート(音符に相当する)が生成される。そこに歌詞を割り当てると、歌い出すのだ。その操作にはちょっとクセがあるので、とりあえず慣れることだ。スクロールは必ず2本指で行うこと。ノートの長さはまずそのノートをタップして選択し、右端のバーを伸ばして調整する。
基本的な音の作り方はPC版のVOCALOIDと同じだ。母音を分割してしゃくり上げる歌い方をさせたり、出だしだけ短い山なりの音程にしたり、そういったテクニックはiOS版でも発揮できる。
画面の下にはPIT、DYNなどのパラメータを手描きできるようになっており、画面をピンチ操作で拡大・縮小すれば細かいニュアンスまでを初音ミクに伝えることができる。
メロディーが気に入らなければ、ノートを上下左右に動かして違うメロディーにし、歌詞を変えたければLyricsボタンで上書きすればいい。電車の中でもトイレでも、そこが創作の場になる。世界最大のレパートリーを誇る仮想歌手の歌声で曲をどこでも作れるのだ。
試しに1曲作ってみた。GarageBandのLive LoopsのChillをちょっとだけ変えてオケにし、それをAudioCopy対応のオーディオエディター経由でMobile VOCALOID EditorにAudioPasteし、その上で初音ミクのボーカルでメロディーを作っていった。それをGarageBandにAudioCopy/AudioPasteしてできたのがこれだ。
この作業は全てiPhoneだけで行うことができる。ビデオはiMovieで編集した(初出時の動画では前半のボーカルがVY1-liteでした。現在は正しいものになっています)。初音ミクが、本来の意味で、僕らの手の上にやってきたのだ。
初音ミクの10年目からは、スマートフォン、タブレットが舞台となり、世界中にボカロPが生まれることを期待したい。
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