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ノートPCは“頑丈”なほどいい? メーカーが過酷な耐久テストをする理由“中の人”が明かすパソコン裏話(1/2 ページ)

» 2017年09月11日 08時00分 公開

 こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。この連載では、PCの周辺機器やパーツ、サポートの秘密、そして次世代のPCにつながる技術などを広く紹介しています。今回はノートPCの頑丈さの指標として定着しつつある「MIL(ミル)スペック」(米軍調達基準)について少し深掘り解説をします。

 先日、「ノートPCには“正しい持ち方”がある?」と題した記事にメーカー担当としてコメントをさせていただいたのですが、あまりの反響の大きさに驚きました。ノートPCが仕事に必須のアイテムとして定着する中、ついつい“相棒”として信頼しすぎてしまい、思いもよらない持ち方をする人を自身も見たことがある、もしくは「そんな持ち方なんて信じられない」とツッコミをする方が多かったのだろうと推察しています。

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 私も仕事や、この連載のような執筆活動においてノートPCは欠かせない相棒になっています。おそらく皆さんも同じ感覚だと思いますが、信頼している道具であるからこそ、いつでも持ち歩きたいと思いますし、いつでも確実に動いてくれないと困ります。

 ぶつけたり、ひねったり、押されたり……日常で加わる衝撃でPCが故障して仕事が止まってしまう事態は避けなければなりません。仕事で使うノートPCの耐久性向上にメーカーが取り組むことは、とても自然なことです。

 工業製品の耐久性と言えば、皆さんも自動車の開発段階で行われる「クラッシュテスト」というものをテレビなどで見たことがあるはずです。

photo クラッシュテストの様子(出典:独Daimler

 自動車が壁に衝突してつぶれ、車内ではエアバックが作動、ダミー人形が衝撃で前に吹っ飛ぶ……というインパクトの大きいクラッシュテストですが、これは「万が一」の事故の被害を最小化することが目的で、日常の使い勝手や信頼性の確認ではありません。

 日常の使い勝手や信頼性は、さまざまな別の環境テストで担保されています。その中には、デコボコ道を長距離走破してもサスペンションに不具合が生じないか、極寒の地や灼熱の砂漠、高高度の場所や高温多湿の地、降雨時の耐水など、車を使うときに遭遇するあらゆる状況が含まれます。

photophoto サスペンションの試験の様(左)。寒冷地テストの様子(右)
photophoto 砂漠での走行試験の様子(左)。降雨での耐水試験の様子(右)

 クルマを購入して砂漠を走るユーザーは限られているかもしれません。しかし、世界中に販売網を展開する場合、どこかでマッチするユーザーがいるかもしれません。

 さらにワンランク上のテストとして、1周が約23キロと長く、道幅が狭くて起伏も激しい、クルマを走らせること自体が過酷で知られるドイツのニュルブルクリンクサーキットを使ったテストを行うメーカーもあります。実際のレース同様に超高速でカーブを曲がったり、加速したり、急減速したりすることで、レーシングカー並の操舵性や信頼性を市販車でも追求しているのです。

photo サーキットを走行する開発車両(出典:日産自動車ニュースルーム

 クルマを購入して、実際にサーキットを走らせる人はほとんどいないでしょう。そう考えると、かなりオーバーな非日常のテストを実施しているといえます。しかし、こういった限界域での信頼性が確保されているからこそ、日常使いでの“余裕”や“安心感”につながるということはイメージしやすいはずです。

 実はノートPCの開発段階でも、さまざまな状況を想定したテストを実施することで、できるだけ故障が発生しないように取り組んでいます。

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