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ノートPCは“頑丈”なほどいい? メーカーが過酷な耐久テストをする理由“中の人”が明かすパソコン裏話(2/2 ページ)

» 2017年09月11日 08時00分 公開
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 例えば、PC本体から発せられる熱の度合いや、USBなどの差し込み口、ディスプレイを支えるヒンジ、キーボードの耐久性などです。

photophoto 放熱(左)。コネクター加圧(右)
photophoto ディスプレイの開閉(左)。キーボードのタイピング(右)

 これらの基本的なものに加え、ちょうど砂漠やニュルブルクリンクサーキットでの走行テストのような、“過酷を極めたテスト”として最近実施されることが増えているのが、「MIL-STD-810」(通称、MILスペック)の試験です。

 MILスペックとは、米軍が物品を購入するときにその物品がクリアしなければならない基準として定められた試験基準です。

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 試験の基準には、テスト項目(Test Method)として60℃の高温、マイナス29℃などの低温、多湿に加え、4000メートル級の高高度、急激な温度変化、凍結、そして砂塵(砂ぼこり)、振動、26方向からの落下、衝撃、防爆(揮発性のガス、ガソリンなどの爆発を誘発しない)等、さまざまな項目が用意されています。

photophoto 「落下テスト」76センチの高さから、26方向(各面、角、辺)にて厚さ2インチの合板上に落下させる(左)。「砂塵耐久テスト」温度60℃かつ、砂が吹き付ける環境で4.5時間の稼働テスト(右)
photophoto 「振動テスト」車両による1600キロの陸上輸送に相当する振動を与える(動作時と非動作時)(左)。「低温環境テスト」動作時マイナス29℃、非動作時マイナス51℃の低温環境にさらす(右)
photophoto 「爆発性気体テスト」爆発性の気体が充満した状況で引火させることなく安全に動作できるかを調べる(左)。「高温環境テスト」動作時60℃、非動作時71℃の高温環境テスト(右)

 実際に軍需用として開発される機材は、こういった試験のクリアが要求されるわけですが、ビジネスノートPCなどの場合は軍などが必ずしも使うのではなく、“耐久性の実証のため”に利用します。メーカーは試験項目の中で、その製品の状況として合うものを選択してテストします。

 多くのユーザーはこういった限界環境でノートPCを使うという事はないでしょう。しかし厳しいテストをクリアしていることが、日常使いでの“余裕”や“安心感”につながることは間違いありません。

 特にビジネスノートPCの場合は、スーツケースに詰め込まれて出張したり、雪の降る冬の寒い日にカバンで持ち運んだり、テストの環境ほどは厳しくなくとも、近い条件での利用も想定されます。こういった試験をクリアして製品化されているものであれば、安心感につながります。

 いかがでしたでしょうか。MILスペック対応をうたっている商品があった場合、どういった試験を実施しているのか、少し気に掛けて見てください。

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著者:白木智幸(しろき・ともゆき)

日本HP PC&タブレットエバンジェリスト。パーソナルシステムズ事業本部に所属し、法人向けタブレット製品のプロダクトマネージャ(製品企画)とビジネスプラン(販売計画)を担当。PCやタブレットの楽しさや素晴らしさを広くお伝えすることを通じ、グローバル化の進む現代でよりよい働き方を実現するためのエッセンスを提供することがテーマ。


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