エリック・ホワイトウェイさんは日本人と米国人のハーフだ。米国の大学を卒業後、日本でモルガン・スタンレーMUFG証券に就職。それ以来20年間日本に住んでいる。飯沼さんも米Salesforce.comに勤務していたことがあり、2人とも「日本から世界へ」の気持ちをずっと持っていたという。
AIベンチャーを立ち上げるなら、世界中の優秀なエンジニアや研究者を集めたほうが面白いことができる──その思いで初めに何人かメンバーをそろえたら、メンバーが新しいメンバーを呼び、多種多様な研究者が集まってくれるようになったと語る。
日本からビジネスを始める勝算もある。
「市場にAIを投入した時に、GDPの伸び率が高いと日本は言われている」――そのようなデータがあると飯沼さんが指摘する。
総務省が毎年公開している「情報通信白書」の2017年版では、現状での実質GDPの年平均成長率が0.9%であるのに対し、IoT・AI化を進めると年平均成長率が2.4%まで上がるという試算が出ている。
そのような総務省の分析に加え、日本の企業がまだまだ紙の文書をデジタル化できていないことが、自分たちのビジネスチャンスだと考えている。
もっとも、データ入力の代行サービスは前から存在している。「Tegakiは彼らにも需要があるはず」と飯沼さん。
現状のデータ入力代行サービスは、精度がそれほど高くない既存のOCRソフトと間違いを直すための人的リソースで成り立っている。精度の担保に人の作業が必要な以上、受注する枚数を増やせばその分人も増やさなければいけない。
ここにTegakiを導入することで、読み取り精度が一気に上がる。これによって人的コストを下げることができるはずだ、と飯沼さんは考えている。
TegakiはCogent Labsのプロジェクトの1つにすぎない。Cogent Labsは、AIによるデータ処理の段階を「認識」「理解」「推論」の3段階で考えている。Tegakiで「認識」の段階を実装した彼らは、その先の「理解」にもすでにチャレンジしている。
その取り組みの1つが、文章中の事柄どうしを理解して構造化するというものだ。これは、ある業界のニュース記事を700万件読み取って、企業間の関係や、部品の供給元など、読み取れる情報を枝に分け、球体状に構造化したものだ。
「Tegakiによってデータ化したテキストはもちろん、ネット上のテキストデータもこのように解析することで構造化することができる。構造化することで関係が可視化され、ビジネス判断の加速につながるのではないか」(飯沼さん)
「企業内で使えば経営判断に使える。投資家が使えばマーケットの構造が分かり投資判断に使える。個人レベルで使えれば、個人の生活に必要な情報の構造を作って情報の取捨選択が容易になるかもしれない」と、AIによる理解の技術がさまざまな規模に適用できる可能性を見いだしている。
「AIで何ができるのか」――Cogent Labsはその答えの1つを示すべく、日々研究開発を進めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR