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» 2017年11月06日 13時58分 公開

ネアンデルタール人は絶滅する運命だった

100万回以上のコンピュータシミュレーションで分かったこと。

[AP通信]

 何がネアンデルタール人を絶滅させたのか。これはいまだに大きな論争の的だ。最新の研究によれば、その答えとしてはさまざまな要因が考えられるものの、ネアンデルタール人はいずれにせよ絶滅する運命にあったという。

 進化論的に私たち現生人類に最も近い存在であるネアンデルタール人は長期にわたり欧州やアジアに生息していたが、アフリカで現生人類が誕生した後、約4万年前に消滅した。

photo フランスの博物館に展示されているネアンデルタール人模型(AP Photo/Laurent Cipriani)

 ネアンデルタール人が絶滅した理由についてはこれまで、気候変動や感染症の影響であるとする説や、知能や文化面で優れていたであろう現生人類との競争に敗れたとする説など、さまざまな仮説が提唱されてきた。

 今回の新しい研究の狙いは、「こうした各種の仮説に反論することではなく、そもそもネアンデルタール人は特別な原因がなくても絶滅していた可能性があると示すことにある」とスタンフォード大学のオレン・コロドニー氏は語る。

 コロドニー氏と同僚研究者のマーカス・フェルドマン氏は10月31日に学術雑誌『Nature Communications』で論文を発表し、自分たちのアプローチを紹介した。

photo Nature Communicationsに掲載された論文(Image via Nature)

 両氏は、ネアンデルタール人と現生人類のそれぞれ複数の小集団が欧州やアジアの各地に生息していたという想定でコンピュータシミュレーションを実施。そうした小集団のうち、無作為に選ばれた一部の個体群が絶滅し、同じく無作為に——絶滅した個体群の種とは無関係に——選ばれた別の個体群に置き換わるというシミュレーションだ。

 シミュレーションは、どちらの種にも先天的な能力差はないとの想定で実施されたが、両者には1つだけ決定的な違いがあった。それは、ネアンデルタール人とは異なり、現生人類はアフリカから移住してくる増援隊によって常に補充されるという点だ。「巨大な波というよりも、むしろポツリポツリとした極めて小規模な動きだ」とコロドニー氏は語る。

 それでもネアンデルタール人と現生人類の比率をひっくり返すには十分だった。さまざまな想定の下でシミュレーションを100万回以上実施したところ、大体はネアンデルタール人が絶滅するという結果になったという。

 生存も死滅も運次第だったのだとすれば、現生人類の移住が何度も繰り返されたことによる影響は大きかったはずだ。「結局、ネアンデルタール人は負ける運命にあったということだ」とコロドニー氏は語る。

 同氏によれば、こうした移住が実際に起こったという証拠は決定的というより示唆的なものであり、「あまり多くの考古学的痕跡は期待できない」という。

 人類の起源を研究する専門家によれば、この論文は今後、ネアンデルタール人を絶滅へと導いたさまざまな要因を解明する上で役立つものとなりそうだ。「この研究は、ネアンデルタール人の絶滅を、現生人類との行動能力の差異を想定せずに説明することを目指した最近の各種の研究とも合致する」とオランダのライデン大学のウィル・ローブレークス氏は語る。同氏によれば、近年はネアンデルタール人と現生人類の間にそうした差異があるとの仮説は誤りであることが概ね証明されているという。

 ドイツのテュービンゲン大学のカテリーナ・ハーバティ氏は、今回の研究はネアンデルタール人絶滅の謎の解明には有用かもしれないが、なぜ現生人類がアフリカから欧州やアジアに拡散したのかという疑問を解消するものではない、と指摘。「その拡散の背景に何があったかを解明することが重要だ」と同氏はメールで述べている。

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