ゲームプラットフォームは“土台”の上にパートナー企業のサービスが載っているイメージだ。システムがダウンすると、全パートナーのサービスに影響が出るため、アクセスが殺到する事態に備えたり、メンテナンスしやすい仕組みにしたりする必要がある。
一方、オートモーティブ事業でも、DeNAはクルマそのものは作らず、自動車メーカー、タクシー会社などと連携しサービスを開発している。そうした状況で今後、何千万台のクルマがネットにつながるとすれば、サービスを提供する側は大量のデータを処理しなければならない。走行しているクルマを止めず、システムをアップデートするには――など、メンテナンスのしやすさを意識するのは分野が変わっても同じだ。
「私たちがシステムを作れば終わりではなく、パートナー企業とコミュニケーションしどうすり合わせていくか、という経験が生きている」(放地さん)
ただ、そうした考え方が完全に一致するわけではなく、オートモーティブ事業ならではの難しさもあるという。「アイテムを購入する」など、スマホゲームのユーザー行動は“仮想世界”で完結する。だがクルマは現実世界を走る「リアルなデバイス」だ。
例えば、タクシーの配車アプリでは、複数のユーザーが同時に予約し、順番が1つずれるだけで10分、20分と待ち時間が変わる。周辺の交通状況の影響も受ける。
「スマホゲームで『サーバが重い』ために10秒待つのと、クルマが来なくて10分待つのとではユーザーの体験が違う。リアルなデバイスをいかに届けるか、ユーザーに不利益が出ないためにはどれほどバッファーを持たせるべきか、考えるのが難しい」(放地さん)
配車されたタクシーが到着したときも、ユーザーが「どのタクシーなのか分かりにくい」という問題もイメージしやすい。放地さんは「これまでは手を挙げた直後にタクシーが止まるので『自分のクルマ』と認識できたが、配車アプリだと『どう通知すれば分かりやすいか』、細かい部分だが考慮しなければならない」と指摘する。
小林さんは「スマホゲームは遊ぶ場所を選ばないが、クルマの場合は、乗車前、乗車中、乗車後とユーザーは実際の空間にいる」と話す。「単純にソフトウェアを開発するのではなく、実際に走っていて、そこに人間の行動が入ってくることを意識しないといけない」
そこで小林さんは、エンジニアを“現場”に連れ出した。自動運転車を使った宅配サービスの実現を目指す「ロボネコヤマト」の実証実験エリア(神奈川県藤沢市)などに出向いた。
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