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アメリカのIT企業にじわり広がる「持ち帰りサービス残業」 “定時あがり”の光と闇シリコンバレー流「早く帰るIT」(1/3 ページ)

» 2017年12月26日 07時00分 公開
[近藤誠ITmedia]

 長時間労働に悩む日本企業と対比しながら、米国、特にシリコンバレーのIT企業の効率的な働き方について紹介する本連載。前回はコラボレーションの経済効果や実際の企業の試みなどをまとめましたが、初回の記事(なぜアメリカのIT企業は“定時あがり”が当たり前なのか?)について、読者から思わぬ反響がありました。

 「米国で働いている知人からは、現地時間の早朝や深夜にメールが来る」「家族と夕食を取るために帰宅して、その後は自室で仕事していると聞く」――。

 では実態はどうなのか? 今回は、シリコンバレーのIT企業における「仕事の持ち帰り」や「リモートワーク」の現状について話を進めたいと思います。

著者プロフィール

近藤誠(こんどう・まこと)

スタンフォード大学工学部大学院 (技術経営)を卒業後、米Evernote社でパートナー製品マネージャーなどを歴任。その後、伊藤忠テクノソリューションズアメリカに製品担当ディレクターとして着任。

半数以上が業務時間外に仕事をする 「モーレツ労働国家」となったアメリカ

 米国のビジネスパーソンというと、定時で帰宅し、広いダイニングルームで家族と一緒にホームディナーというイメージが強いかもしれません。しかし、スマートフォンやクラウドサービスなど、時間や場所を問わず仕事ができる環境とツールが整ってしまった今、どうやらその状況は変化しつつあるようです。

 仕事のスケジュールが常に変化し、いつ何に対応しなければいけないか分からない。そんな状況の中でディナーの時間が常に変動してしまい、結果的に家族で食卓を囲むチャンスを逃す傾向も見られるようです。ミレニアル世代(2000年代に成人または社会人になる世代)の比較的若い親と比べ、ジェネレーションX世代(1960〜1970年代生まれ)の親はその傾向が強いとの結果でした。

photo 持ち帰り残業が当たり前に……?

 米大手調査会社Gallupが2014年に行った調査によると、以前と比べて業務時間外の作業量が増えたと答えた米国人労働者が全体の3分の2を超えており、さらにトロント大学の調査(2016年)によれば、約半数のビジネスパーソンが仕事を家に持ち帰っていることが明らかになったとのことです。第1回の記事で、日本は長時間労働者(週に49時間以上働く人)の比率が先進国の中でも高いといったデータを紹介しましたが、各国の「平均労働時間」を調べた米National Todayの調査によると、米国が先進国中で最も長いことが明らかになりました。

 帰宅後でも仕事できるのが裏目に出て、企業によってはむしろ就労時間内の業務効率が下がっているケースもあるかもしれません。24時間365日、基本的にいつでも誰かとつながれるため「すぐに返事」「とりあえず送ればOK」が暗黙の了解になった今、思わぬ仕事の依頼に「ノー」と言いにくい場合もあるでしょう。このような悪い意味での“常時接続への慣れ”により、ますます仕事が増えてしまっている人も多いはずです。

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