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アメリカのIT企業にじわり広がる「持ち帰りサービス残業」 “定時あがり”の光と闇シリコンバレー流「早く帰るIT」(2/3 ページ)

» 2017年12月26日 07時00分 公開
[近藤誠ITmedia]

 ただし、それが個人の満足度にどう影響するかは難しい論点です。Gallupの調査によると、業務時間外でもメールを頻繁に確認するフルタイム労働者は全体の3分の1を超えていますが、そうした人々の多くは「充実した生活を送っている」「現在の働き方に満足している」と回答しています。業務時間外にメールを見ない人たちと比べて、ストレスレベルの違いは若干見受けられたものの、働き方の満足度に関しては両者あまり変わりない結果が見られました。

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 結局のところ、働き方に関する社内方針がどう受け止められるかは、個人の働き方とその満足度に依存する――ということになるでしょう。企業は従業員一人一人の働き方や満足度の変化に常にアンテナを張る必要があり、その変化に応じて柔軟性と安全性を確保する制度設計を絶えず続ける必要があると言えます。

 ちなみにフランスでは、業務時間外に仕事のメールから離れられる権利を全てのビジネスパーソンに付与する法案が2017年に制定されました。その動向を各国が注視しているようです。

「どこでも働ける」ことの意義とは

 労働環境の変化といえば、「時間を問わず」のほかに「場所を問わず」にも対応する必要があります。Gallupによれば、43%の米国人労働者がリモートワークを行っており、彼らにとっては柔軟なスケジューリングや自宅での仕事が可能かどうかが企業を選別する決め手になりつつあるようです(参考:New York Timesの記事)。

 ところで、こんな興味深い話があります。米Dellが従業員約11万人の労働状況を調査したところ、それまで17%の社員にしかリモートワークの許可を出していなかったにもかかわらず、実際は58%の社員が既に少なくとも1週間に1回はリモートワークを行っていました(参考:Wall Street Journalの記事)。しかし同社はその後、社内統制を強めるのではなく、2020年までに50%の従業員が少なくとも週半分はリモートワークできるよう環境を整えると公式発表。時流に応じた働き方を目指す英断として受け止められました。

 ただし、リモートワークの導入に当たっては、企業それぞれに合わせた制度設計を考える必要もあります。目指す方向性によっては、そもそもリモートワークを全面的には取り入れない選択肢もあるでしょう。

 実際、もともと許可していた自宅勤務を近年になって禁止したIBMやYahoo!、そもそも自宅勤務をほとんど許可していないGoogleやAppleといった企業もあります。これらの企業は、オフィススペースでの出会いとコラボレーションを通じ、新たな革新を生み出すことを最重要視しているのです。

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